研究課題/領域番号 |
19K07005
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
安池 修之 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (10230210)
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研究分担者 |
小幡 徹 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (20324080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セレン含有誘導体 / タンデム反応 / 銅触媒 / 一般合成法 |
研究実績の概要 |
有機合成化学の分野でセレン官能基を導入する場合,主にセレノ―ル(RSsH),セラニルクロライド(RSeCl)ならびにジセレニド(RSsSeR)がセレン源として広く利用されている.しかしながらこれらの試薬は調整が煩雑なこと,不安定な化合物もあること,不快な臭いをもつなど,より簡単なセレン源の利用が求められている.本課題では安価で取り扱い容易なSe末をSe源に利用した触媒的C-H活性化とクロスカップリング反応を基軸とした三成分反応を利用した複素環含有ジアリールセレニドの簡便な一般合成法の確立を目的にしている.これまでに分子内タンデム反応を利用した含セレン四環性化合物の合成として1-(2-ブロモアリール)ベンゾイミダゾールとSe末との反応に取り組んだ.反応条件を厳密に精査することで,銅触媒の添加を必要としない塩基のみの添加でSe原子の導入を達成し,イミダゾール環とベンゾセレナゾールの縮環した新規な四環性化合物の一般合成法を確立した.ここでは得られた化合物の立体構造を明らかにするとともに分光特性も明らかにし,報告している(Beilstein JOC掲載).一方,ベンゾイミダゾールに対するセレン末とアリール基供与体を利用した三成分反応では2-セラニルベンゾイミダゾールが中程度で得られる反応条件まで見出せたが,基質適応範囲が極めて制限されることから他の芳香族複素環を利用した銅触媒下でのSe末を利用したC-H活性化反応の開発に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベンゾイミダゾールに替わる芳香族複素環としてイミダゾピリジンを選択し,銅触媒下でSe末との反応を検討した.その結果,イミダゾピリジンの3位でC-Hセラニル化が進行すること,基質に対してSe末の添加量を変えるのみで,モノセレニドとジセレニドを作り分けられることを新たに見出した.また,分担者との共同研究で得られた化合物群中にHela 細胞に対して顕著に細胞増殖を抑制し,かつ,非ガン細胞であるヒト脳毛細血管内皮細胞には毒性を示さない化合物が存在することを新たに見出した(Beilstein JOC掲載).現在,他の芳香族複素環に対するこの反応の有用性を調査している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では創薬シードの探索の一環として供給ルートが確立されていない複素環を構成成分に持つジアリールセレニドの簡便な一般合成法の確立を目的としている.これまでに見出したセレン原子導入法がどの程度の汎用性を持つか興味が持たれる.現在,他の芳香族複素環として16族元素を含むベンゾヘテロールに着目しタンデム型を含めたCーHセラニル化反応の開発に取り組んでいる.現在その過程の中でC-Hセラニル化反応に利用するベンゾフラン誘導体の合成に有機アンチモン化合物が優れた機能を示すことを見出しているので併せて検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年当初から新型コロナウイルスの影響で研究室の閉鎖ならびに人数を制限した状態での研究活動が続いているためとなります. 翌年度分として請求した助成金と合わせ交付されたものは継続的に銅触媒下で行う有機セレン化合物の合成に活用するとともに,研究過程で新たに見出したC-Hセラニル化に利用するベンゾフランのC-Hアリール化反応と併せて完遂したい.課題最終年度となり,機器の不測の故障等が生じない限り交付資金は消耗品としての利用を計画している.コロナ禍であり,旅費等は計上せず,その他として論文投稿料や校正費用として利用させて頂く.
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