課題最終年度はこれまでに得られた知見を基に,セレン末をセレン源に用いたタンデム反応として,抗炎症薬として用いられるアンチピリンとその類縁体に対する三成分C-Hセラニル化を検討した.先ず,ウラシルの位置選択的なセラニル化に有効であった銀触媒下でアリール基供与体としてボロン酸を用いて反応を試みたが全く反応が進行しなかった.そこで,利用する触媒を銅に変更しながら各種のアリール基供与体を用いて最適な反応条件の探索を行った.その結果,アンチピリンに対して銅触媒下,トリアリールビスマスをアリール源としてセレン末との反応を行うと効率よく4位にアリールセラニル基を導入できることを明らかとした(Tetrahedron掲載).従来このタイプの反応はセレン源に調整の難しいジセレニドを利用する反応のみが報告され,セレン末を用いることで反応の効率化を図ることができた.本課題はコロナ禍のために研究期間を延長することとなったが,以下のことを明らかにでき,含セレン化合物の簡便で汎用性の高い合成法を新たに提案するとともに得られた一部の化合物の抗腫瘍活性を評価した. 1)塩基とセレン末を用いたタンデム反応によるベンゾイミダゾベンゾセレナゾールの合成 2)銅触媒下でイミダゾピリジンとセレン末とのC-H活性化反応を利用したビスイミダゾピリジルセレニドとジセレニドの選択的合成と抗腫瘍活性 3)ベンゾフラン誘導体に対する銅触媒下でのC-H活性化反応を利用した2-置換―3セラニルベンゾフラン誘導体の一般合成 4)銅触媒下でイミダゾピリジン,セレン末,末端アルキンを用いたアルキニルイミダゾピリジルセレニドの合成 5)銀触媒下でウラシル,セレン末,アリールボロン酸による三成分反応を用いた5-アリールセラニルウラシルの一般合成 6)銅触媒下でアンチピリン,セレン末,ビスマス化合物を用いた4-セラニルピラゾロン誘導体の合成
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