研究課題/領域番号 |
19K07009
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
正田 卓司 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 室長 (60435708)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エストロゲン受容体 / SERD |
研究実績の概要 |
【背景および目的】エストロゲン受容体(以下ER)は,ステロイド受容体スーパーファミリーに属する核内受容体の1つである.ERは乳癌患者の約70%で過剰発現が認められており,ERの機能を抑制する薬剤(アンタゴニスト)が乳がん治療薬として利用されている.ERにはERαとERβの2種類のサブタイプが存在し,細胞内ではα/α,β/βホモダイマーあるいはα/βヘテロダイマーを形成する.ERβはERαと比較して転写活性化作用が弱く,ERαと二量体を形成した場合にはERαの活性を抑制する作用があることが知られている.また近年では,乳がん幹細胞や腎細胞がんにおいてERβにがん亢進作用があることが示唆されており,ERアンタゴニストに関するサブタイプ選択性を理解することは重要であると考えられる.我々はこれまでにERのアンタゴニストであるタモキシフェンとラロキシフェンに長鎖アルキル基を導入した化合物(それぞれC10,RC10)をデザイン・合成し,これらの化合物がERαの機能を阻害するだけでなく,ERαの分解を誘導することを報告している.そこで本研究では,これらの化合物のERα,ERβの選択性を検討することとした. 【方法】ERに対するアンタゴニストとして,4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT),ラロキシフェン,C10,RC10を用いこれらの結合能をPolarScreen ER Competitor Assay Kitを用いて評価した.検出には蛍光偏光度を用い,IC50を算出した. 【結果および考察】これらの化合物はERαおよびERβに対して,nMオーダーの結合能を有しており,また4-OHTとC10間およびラロキシフェンとRC10間ではIC50に大きな差は見られなかった.以上のことから長鎖アルキル基はERサブタイプ選択性に大きな影響を与えないことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者が見出したSERD設計原理について,汎用性がある可能性を示すことができている.今後他の核内受容体への応用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は他の核内受容体のリガンドに対して長鎖アルキル基を導入した化合物のデザイン・合成を行い,その有用性を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に購入を予定していたアッセイキットの納品が遅れたため.
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