【背景および目的】エストロゲン受容体(以下ER)は,ステロイド受容体スーパーファミリーに属する核内受容体の一つである.ERは乳がん患者の約70%で過剰発現が認められており,ERの機能を抑制する薬剤(アンタゴニスト)が乳がん治療薬として利用されている.ERにはERαとERβの2首里のサブタイプが存在し,細胞内ではα/α,β/βのホモダイマーあるいはα/βのヘテロダイマーを形成する.ERβはERαと比較して転写活性化作用が弱く,ERαと二量体を形成した場合にはERαの活性を抑制する作用があることが知られているる.また近年では乳がん幹細胞や腎細胞がんにおいてERβにがん亢進作用があることが示唆されており,ERアンタゴニストに関するサブタイプ選択性を理解することは重要であると考えられる.我々はこれまでにERのアンタゴニストであるタモキシフェンとラロキシフェンに長鎖アルキル基を導入した化合物(それぞれC10,RC10)をデザイン・合成し,これらの化合物がERαの機能を阻害するだけでなく,ERαの分解を誘導することを報告している.また,これらの化合物のERα,ERβ選択性を検討し,長鎖アルキル基が親化合物のサブタイプ選択性に影響を与えないことを明らかにした.そこで本年度は,ERβ選択性の高い化合物に長鎖アルキル基を導入した化合物(WC10)をデザイン・合成し,そのサブタイプ選択性を検討した. 【方法】ERβに対するリガンドとしてway-202196を選択し,そのシアノ基を変換して長鎖アルキル基を導入した化合物をデザイン・合成した.この化合物のER結合能をPolarScreen ER Competitor Assay Kitを用いて評価した.検出には蛍光偏光度を用い,IC50を算出した. 【結果および考】WC10は親化合物と同等のサブタイプ選択性を有することを明らかにした.
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