研究課題/領域番号 |
19K07010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高倉 栄男 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (40772702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化学発光 / イメージング / 分子プローブ |
研究実績の概要 |
In vivo光イメージングは生きた動物個体で生体分子の挙動をリアルタイムに解析できる強力な分析ツールである。蛍光法によるイメージングが行われているが、励起光による影響で感度があまり高くないことが課題であった。一方、化学発光法は励起光を必要としない光検出法のためバックグラウンドシグナルのない高感度な測定が可能であり、近年では高輝度な化学発光基質の開発が進みin vivoイメージングへの応用例も報告され始めた。しかし、生体分子をイメージングするための分子設計法が確立していないことから、分子イメージング試薬(プローブ)として汎用されるに至っていない。そこで、本研究では、細胞内の様々な標的分子を検出できる化学発光プローブの分子設計法を確立し、確立した設計法を適用して病態にかかわる分子を標的にした化学発光プローブを開発することを目的とする。 そのために、蛍光プローブの設計原理として汎用されている電子移動による消光原理を化学発光法に利用可能かどうか検証を行うこととした。蛍光とは励起されるまでの過程は異なるが、一旦励起されればその後の挙動は同じだと考え、励起した発光団の近傍にHOMOエネルギーの高い電子供与体が存在すると、電子移動により発光が消光すると作業仮説を立てた。その検証のための化学発光基質の設計、合成に取り掛かったが、当初設計した化学発光基質の合成を進めることができなかった。そこで、先行研究にて報告された別の発光基質骨格を選択し、合成、発光特性の確認を行った。今後、この発光基質を基本骨格にして仮説を検証するための化合物を合成し実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画した合成が進まず、別の発光基質を基本骨格として用いた化合物で研究を進めることとした。化学発光において電子移動による消光が起こるという仮説の検証を行うことができなかったため、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
化学発光において電子移動による発光の消光を確認するための化合物を設計、合成する。具体的には、HOMOエネルギーの高い構造としてアミノ基やメトキシ基をもつベンゼン環構造を発光基質の近傍に有する化合物を設計する。これらの化合物を効率よく合成できるような分子を設計し、合成ルートを確立する。合成した化合物を用いて測定を行い、電子移動による消光現象が観測されるかを検討し、仮説を検証する。消光が起こる場合は、その電子移動の効率は電子供与体のHOMOエネルギーに依存し閾値が存在すると考えられる。発光強度とHOMOエネルギーの相関関係を精査し、閾値が存在するかどうか、またそのHOMOエネルギーの値を求める。この知見は論理的な化学発光プローブの開発に利用することができる。
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