研究課題
メトトレキサート (MTX)は、関節リウマチ治療のアンカードラッグとして、現在広く用いられており、臨床経験的にその高い有効性が認められているが、その作用機序には不明な点が多い。我々はこれまでに、MTXに特異的な結合を示す複数種のタンパク質を同定することに成功している。本研究は、受容体CD74を介してシグナル伝達する炎症性サイトカインのマクロファージ遊走阻害因子(MIF)に着目し、MIFの機能に及ぼすMTXの阻害作用について、タンパク質間相互作用解析、結晶構造解析により分子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、MTXとMIFまたはCD74とMIFの複合体形成に重要な水素結合状態を解析するために、MIFの中性子構造解析を目的として、MIF大型単結晶の作成し中性子回折実験を行った。結晶化条件を検討した結果、1辺1mm以上となる大型のMIF単結晶を得ることができた。得られた大型結晶を用いて、iBIX BL-03 (J-PARC)において中性子回折測定を行った結果、水素結合を議論できる分解能で回折データを得ることができた。また、同じ結晶を用いて、BL-5A (KEK)にてX線回折データを取得した。現在、得られた回折データを用いて、MIF構造の精密化を行っている。また、MIFとの相互作用実験を行うために、大腸菌または分泌酵母を用いた受容体CD74リコンビナント体の発現系構築を行った。SDS-PAGEにより、発現確認を行ったところ、CD74の分子量と一致するバンドが得られた。また、CD74抗体を用いたWestern blotを行ったところ、CD74の特異的なバンドを確認することができた。現在、単一精製を行っている。
2: おおむね順調に進展している
中性子構造解析が行える大型MIF結晶の作成は、当初に予想していた通り進展が遅かったが、結晶化条件のスクリーニングを再度行うことで、新しい結晶化条件が見つかり、MIF単結晶の大型化に成功した。その大型結晶を用いて中性子線の回折データが得られているので、実験計画の遅延はない。さらに、受容体CD74の異宿主発現系の構築にも成功したので、次年度は、MIFと受容体CD74との相互作用解析について、詳細を報告できると考えている。
得られた中性子とX線の回折データを解析し、MIFの精密構造を明らかにする予定である。また、MTX-MIFの中性子構造解析に向けて結晶作成を行う。さらに、受容体CD74に関しては、現在、タンパク質の発現確認と粗精製まで達成しているので、今後は単一精製を行い、MIFとの相互作用解析を行う予定である。
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Kidney International Reports
巻: 5 ページ: 1595~1602
10.1016/j.ekir.2020.06.026
http://www.gipc.akita-u.ac.jp/~bioanal-str-chem/index.html