現在大部分が未解明である脂質による膜タンパク質制御原理の一端の解明を目指し、会合モチーフとして知られるGXXXGの周辺配列とコレステロールの組み合わせや、ヘリックスブレーカーとして知られるプロリンが誘起しうるヘリックス折れ曲がり構造が膜厚によりどのように調節されるか解明することを目指し研究を行った。 GXXXG配列の周囲に位置するアミノ酸について、GXXXGの周辺配列をグリシン・アラニン・ロイシンに少し変化させるだけでも会合力に大きく影響することが明らかになり、多くの場合会合が見られなくなること、またグリシンを1残基追加導入することでコレステロール含有膜での会合が見られるようになることが明らかになっていた。これらの変化のメカニズムを明らかにするために、アミノ酸配列から会合体構造を予測するプログラムであるPREDDIMERを用いて、各配列の膜貫通ヘリックスがどのような会合体構造を形成しうるか調べた。結果、コレステロールを含まない膜中で安定化される会合体は小さなヘリックス交差角を持ちヘリックス同士が平行に並んだ構造を持つ一方で、コレステロール含有膜中で安定化される会合体は大きなヘリックス交差角を持ちヘリックスがX字型に交差した構造を持つことが予測された。コレステロール含有膜は膜疎水部で高い側方圧を持つため、その側方圧を解消するようにX字型の会合体構造が安定化しうると解釈できる。これらの予測と実験結果を考え合わせると、GXXXG周囲のアミノ酸配列によって取りうる会合体の交差角は異なるが、膜脂質の組成がそれらの会合体の安定性に大きく影響していると考えられた。
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