研究課題/領域番号 |
19K07014
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
木村 良一 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (20343022)
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研究分担者 |
伊藤 公一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50330874)
井上 明男 京都大学, 医学研究科, 非常勤講師 (80107060)
山澤 徳志子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00282616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミリン / アルツハイマー病 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)は糖尿病患者が患う確率が高く、第3の糖尿病とも言われるが、その理由は明らかではない。研究代表者はカナダ・アルバータ大学との国際共同研究を行い、糖尿病患者から特異的に抽出されたアミリンと、ADの原因とされるベータ・アミロイドとの両方が、脳内のアミリン受容体を通して認知機能を低下させることを発見した(J Neurosci. 32(48):2012:研究代表者が第1著者)。 本研究では、そのアミリン受容体が脳内でどのような影響を及ぼすかを、遺伝子改変マウスを用いて詳細に調べる。具体的には、1.脳内アミリン受容体信号を制御する受容体結合物質(リガンド)の構造解析、2.脳内アミリン受容体信号による海馬認知機能低下のメカニズムの解明、を軸に研究を進める。 1.は研究協力者であるカナダ・アルバータ大学のジャック・ジャマンダス教授との国際共同研究を行う。また2.は、国内の研究分担者(京都大学 井上明男、東京大学 伊藤公一、東京慈恵会医科大学 山澤徳志子)らと、電気生理学的手法、蛍光イメージング、マウス行動実験、小動物用MRIなどを駆使して行う。 本研究課題は現代の飽食に起因する生活習慣病である糖尿病が、認知機能にも悪影響を与える明らかな証拠であり、社会的意義は大きい。研究代表者が勤務する山口東京理科大学を脳内アミリン研究の日本での研究拠点とし、この課題を国内外との共同研究を通して創薬に繋げたい。 研究初年度である本年は、測定機器のセットアップや遺伝子改変マウス5XFADの準備などをしっかり行った。また、8月からは1年間の予定で、研究代表者自らが国際共同研究先のカナダ・アルバータ大学に赴き、研究を加速させている。その期間中の科研費の執行は行っていないが、明らかに本研究課題の一部であるために研究中断の申請の予定はない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度前半は大阪大学にて、以前から進めていたマウス脳内へ直接脳内に導入する方法(大槽注入法)を用いて、認知機能を計測するマウス行動試験であるY迷路試験を行った。これまでの他の実験と同様に、アミリンやベータ・アミロイドによって低下した認知機能が受容体遮断薬で回復し、大槽注入法が本研究でも有効であることが確認できた。 また、東京慈恵会医科大学に設置された小動物用MRI(クライオプローブを用いた9.4T MRI)を用いた、高解像の脳非侵襲脳機能イメージングの実験準備も行った。生きたままのマウスの脳内イメージングにより、アミリンやベータ・アミロイドなどの局在や脳の活性を確認する予定であり、その操作手順やマウスの処理などを確認した。さらに東京大学附属牧場において、アルツハイマー病のモデルマウスである5XFADマウスの繁殖を開始し、Y迷路試験や恐怖条件付け試験を行うための機器を設置し、予備実験を行った。 後半の8月からは一年間の予定で、研究代表者がカナダ・アルバータ大学に赴き、研究協力者である医学部神経科のジャック・ジャマンダス教授と国際共同研究を行っている。同大学プリオンセンターのデイビット・ウェスタウェイ教授より、マウスのアミリン受容体を半減させた遺伝子改変マウス(CTR-HET-loxp mice:hetCTRマウス)の供給を受け、電気生理学的手法や行動実験を駆使し、認知機能の評価を行っている。 上記の通りに予定以上に研究は進んでいる一方で、研究代表者の所属している山口東京理科大学での実験準備は次年度以降に先送りした。山口東京理科大学に設置予定であった脳スライス標本作成用のスライサーは、価格上昇のために購入を断念した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、3人の研究分担者との国内共同研究も、カナダ国との国際共同研究も、いずれも予定以上に順調に行われている。研究代表者は次年度の8月にカナダから帰国予定であるが、Covid-19の混乱時も出向先のアルバータ大学より許可を得て実験は継続され、現時点(2020年5月)では支障は出ていない。成果は2020年度中に論文投稿予定である。東京大学附属牧場でのアルツハイマー病モデルマウス(5XFADマウス)の継代も順調で、帰国後は速やかに実験が遂行されると確信している。 研究代表者が所属する山口東京理科大学での実験は、実験スペースと実験機器の値段の上昇の問題により、断念することも視野に研究を進める。その場合、予定した電気生理学実験とマウス行動実験は、研究代表者が東京大学附属牧場にて行う。そのため、旅費の支出が大きくなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
山口東京理科大学に設置予定であった脳スライス標本作成用のスライサー(2,000千円)は、価格上昇のために購入を断念した。実験は東京大学附属牧場で行う予定であり、剰余金はその旅費に充てる。
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