本研究成果の意義は、細胞表面を薬物保持担体としてみなす「細胞製剤学」という新たなDDSの概念を提唱できた点にある。ボロン酸が細胞表面糖鎖に結合する特性を利用し、ボロン酸修飾インスリンを細胞表面に保持させることで、血糖降下作用が持続する例を示すことができた。また、グルコースオキシダーゼを併用することで血糖値応答性インスリン製剤へ展開する例も示せた。これらの研究成果は注射液を投与するだけのシンプルな方法で実施できたが、これは細胞を製剤の構成要素として捉えるユニークな「細胞製剤学」という概念が可能にしている。シンプルであるため制約が少なく、実現性の高い刺激応答性DDS研究が可能になると期待される。
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