研究課題/領域番号 |
19K07016
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
唐澤 悟 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (80315100)
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研究分担者 |
渕 靖史 昭和薬科大学, 薬学部, 特任助教 (40748795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん検出 / 自己集合化分子 / 蛍光イメージング / MRI |
研究実績の概要 |
温度応答性分子UBDを基本骨格として、①高度にがん集積し、他の組織への集積が軽減する分子開発、② MRI造影剤による非侵襲的診断プローブ開発、③長波長発光による近赤外診断プローブ開発、④アルツハイマー病発生要因とされるアミロイドβタンパク(Aβ)認識プローブ開発を目的としている。 ①については、自己集合化能をより高めるために、今まで基本骨格として用いていたウレアベンゼン骨格(UBD)を変更し代替骨格を探索している。ラジカルナノ微粒子の例にはなるが、五員環プロキシルラジカルのNOの周辺に親水性置換基を導入して得られたナノ微粒子が、還元剤であるアスコルビン酸に対して高い安定性を示した。この結果は、UBDの代替として適している可能性がある。今後より詳細に検討し、UBDに代わる新しい骨格を探索する。また、先に述べたプロキシルラジカルナノ微粒子については、ACSのLangmuirに掲載が決定した。 ②については、MRI造影剤であるガドリニウム製剤をUBD骨格に導入したGd-AL-UBDとGd-EG-UBDについて、機能性・安定性などを詳細に評価した。臨床現場で用いられているガドリニウム製剤に比べて高い感度がGd- AL-UBDとGd-EG-UBDから得られ、安定性も臨床薬と同程度であった。これら得られた知見を基に、現在論文投稿準備中である。 ③については、800ナノメートル程度を蛍光極大波長とする近赤外発光プローブNap-Amの開発に成功した。Nap-Amは、水溶液への溶解性が低い点と高極性溶媒で蛍光量子収率が低い問題点がある。現在これらの問題点の解決を図っている。 ④については、2019年度は進めていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ウレアベンゼン誘導体(UBD)に代わる代替の基本骨格を探索している途中である。五員環プロキシル骨格が有望であり、実際水溶液中でナノ微粒子の形成が確認され、機能性も担保されていた。しかしナノ微粒子のより高い安定性を目指した場合、平面性の高い構造が最適である可能性がある。従って、二環性のナフタレン、キノリンやイソキノリンを候補としても展開したい。プロキシ骨格を有するナノ微粒子は得られたが、がんへの集積については未検討である。この項目における進捗はやや遅れている。 ②MRI造影剤用のプローブ開発であり、一定の成果が得られた。UBD骨格に二種類のリンカーALとEGを介して臨床製剤であるGdDOTAと連結した、Gd-AL-UBDとGd-EG-UBDをそれぞれ得た。これらを使って機能性の評価を行った結果、GdDOTAよりも高い水プロトン縦緩和能が得られた。これらを使って、担癌マウスへ尾静脈投与しMRIで観察した結果、腫瘍部とその他の組織とのコントラストの違いが明らかになった。これらの結果を基に現在論文投稿準備中である。 ③近赤外領域で発光するプローブの開発では、ナフチリジン環とイミダゾール環が縮環した三環性の化合物Nap-Anにおいて、極性溶媒中で800 ナノメートルの蛍光極大であった。しかしながら、水への溶解性と極性溶媒での発光強度低下の問題点があり、現在Nap-Anのアミノ基に水溶性基であるエチレングリコール鎖の導入を検討している。 ④についての実験における進展はないが、総説で研究成果をまとめる機会があった。
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今後の研究の推進方策 |
①代替ウレアベンゼン骨格の候補として、プロキシ骨格について検証してきた。プロキシ骨格で得られた成果はACSのLangmuirへの掲載が決まった。プロキシ骨格で展開したラジカル分子は、メタルフリー有機ラジカルMRI造影剤としての機能を有するものの、機能性が限定的であり、蛍光物質をプロキシ骨格へ導入するのは合成上困難である。そこで、二環性のナフタレン、キノリンやイソキノリン環を基本骨格として展開することを予定している。今年度中に候補となる骨格を確定させたい。また、得られたプロキシ骨格を基本とする微粒子について、共同研究先との連携により、がんへの集積性について検討予定である。 ②MRI造影剤については、一定の成果が得られ論文投稿準備中である。しかしながら得られた成果よりも、より高機能化を目指すことも考えており、ガドリニウムイオンと有機スピンを含む新規のヘテロスピン化合物の合成を進める予定である。現在、ガドリニウムイオンと錯形成するDOTAに有機スピンを導入するステップまでは達成しており、今後ガドリニウムイオンの導入を検討する。 ③Nap-Amにおいて、近赤外発光が見いだされたが、機能性の観点からでは不十分である。Nap-Amに極性基であるエチレングリコール鎖を導入して水溶性向上を目指すとともに、蛍光量子収率向上のために、新しい分子設計を考えている。 ④UBDが一定のアミロイドβ凝集阻害効果を有することが明らかになっている。アミロイドβに対してより高い結合力を有するUBDの合成を進めていく。UBD中にアミノ酸を導入するアプローチでの分子設計を考えているが、まずはスクリーニング的に様々なアミノ酸を導入することから検討することを予定している。
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