研究課題/領域番号 |
19K07018
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
米田 誠治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (60425056)
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研究分担者 |
平本 恵一 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (90251793)
古川 絢子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (10455537)
植村 雅子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (70511997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白金錯体 / 核酸 / 免疫 / プロテオミクス / 抗腫瘍効果 |
研究実績の概要 |
次世代白金製剤としてその臨床応用が期待されているテトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(テトラゾラト架橋錯体)は、in vivoで持続的かつ顕著な抗腫瘍効果を発揮する。その要因として、がん細胞に修復されにくいDNA付加物を形成することやがん細胞に高効率に取り込まれることが挙げられる。これらに加え、本研究では①血清アルブミンと複合体を形成することによる EPR効果(Enhanced Permeability and Retention Effect, 腫瘍部位への高い漏出性と滞溜性)、②生体分子と相互作用することによって起こる非特異的免疫賦活作用、および③腫瘍微小環境変化を新たな要因として提案し、抗腫瘍効果との関連の有無を調べている。 2019年度は②と抗腫瘍効果との関連を調べた。C26大腸がん細胞を同種移植したマウス群(C.B-17/Icr, n = 5)およびその免疫不全マウス群(C.B17/Icr-scid/scidJ, n = 5)に対するテトラゾラト架橋錯体の抗腫瘍効果について腫瘍体積変化を指標に評価したところ、前者に対しては従来通りの高い抗腫瘍効果が確認されたが、後者に対してはほとんど効果を発揮しなかった。つまり、テトラゾラト架橋錯体の作用機序には、何らかの免疫賦活作用が含まれることが明らかになった。 また、これらのメカニズム解析とは別に、白血病モデルマウス群(BALB/c, n = 5)に対してテトラゾラト架橋錯体の効果について延命率を指標に検討を行ったところ、テトラゾラト架橋錯体が非常に高い延命効果を発揮することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テトラゾラト架橋錯体の顕著な抗腫瘍効果と優れた持続性の要因として考えられる3つの要因(①EPR効果、②非特異的免疫賦活作用、③腫瘍微小環境変化)を提案し、これらの関与の有無を2019年度内に明らかにする予定であった。 ①および③についてはまだ現在検討段階であるが、②の関与が明らかとなったことは画期的な発見で、持続的かつ顕著な抗腫瘍効果の大きな要因を特定することができた。また、in vivoで白血病モデルマウスに対して非常に高い延命効果を発揮したことによって、より臨床応用への期待が高まった。 よって、2019年度の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記3つの要因(①EPR効果、②非特異的免疫賦活作用、③腫瘍微小環境変化)のうち、①および③の関与の有無を、今年度前半に明らかにする。マウスを用いたin vivo実験で①の関与が確認された場合、テトラゾラト架橋錯体とアルブミンやポリアミノ酸と複合体を形成させたDDS(Drug Delivery System, 薬物送達システム)製剤を調製し、詳細な評価を行う。また、②についても詳細なメカニズムについて検討を行う。
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