研究課題/領域番号 |
19K07020
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
田中 将史 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (40411904)
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研究分担者 |
山田 俊幸 自治医科大学, 医学部, 教授 (50211636)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血清アミロイドA4 / アポリポタンパク質 |
研究実績の概要 |
アポリポタンパク質として脂質代謝を担う血清アミロイドA(SAA)にはいくつかの種類が存在する。これまでは、関節リウマチなどの炎症性疾患に伴って血中濃度が著増する急性期型のSAA(主にSAA1)に関する研究を行ってきた。それに比べ、SAA4は正常時の血中に高濃度で存在するにもかかわらず、生体内での機能や疾患との関連性が不明であるがゆえにこれまで注目されることがなかった。しかしながら近年、病態や加齢によってSAA4の発現量や糖鎖付加割合が変化することが報告され、この現象がなぜ起こるのか疑問を抱いた。そこで本研究では、未解明な部分の多いSAA4に焦点をあて、①まずはSAA4の基本的性質(構造・物性)を理解すること、②脂質代謝機能(生理的意義)に関する手がかりをつかむこと、③糖鎖付加の意義(特に病理的な意義)の解明につなげることを目的とした。 初年度は、Hisタグを有するSAA4を用いて、その溶解性や二次構造に関する情報を得た。これまで取り扱ってきた他のアポリポタンパク質とは異なる性質を示すことが明らかとなってきており、場合によってはSAA4の調製方法に立ち戻るなどして慎重に進めていく。また、肝臓由来の細胞株(HepG2)から分泌されるSAA4について調べた結果、これまでの報告とは異なり、炎症を起こした際にSAA4の分泌が増加する可能性が示された。これについても、さらに異なる培養環境でその詳細を明らかにしていく。 現段階で本研究成果の意義や重要性を述べることは時期尚早であるが、少なくとも今後の研究を発展させるうえで、基礎となる知見を得たと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸菌発現系により、C末端領域にHisタグを有するnon-glycosylated SAA4を準備した。以前の実験結果より、精製後に凍結乾燥を行うと再溶解時にSAA4の溶解性が著しく低下することが予想されていたため、溶液状態で冷凍保存することとした。その結果、溶解性の改善が認められ、変性剤に溶かしたSAA4溶液を中性pHに対して透析した場合においても、実験可能な濃度まで溶解した。円二色性(CD)スペクトル測定により明らかとなった、37℃においてSAA4が二次構造をもたないという結果はSAA1と同様であったが、SAA1とは異なり、4℃においても二次構造をもたない結果となった。次に、他のアポリポタンパク質で広く用いられている、αヘリックス構造を誘起する溶媒であるトリフルオロエタノールを添加したが、二次構造の変化はほとんど認められなかった。 C末端領域のHisタグを切断することは不可能であったため、以前の実験で少量ではHisタグの切断に成功していたN末端領域にHisタグを有するnon-glycosylated SAA4を用い、Hisタグ付加の構造に及ぼす影響を調べることとした。ここで、休校措置となったため、研究のペースダウンを余儀なくされている状況である。 一方、上記とは独立して、培養細胞からのSAA4発現の量的・質的変動の解析を試みた。いくつかの異なる培養条件で肝臓由来の細胞株(HepG2)を培養した結果、これまでの報告とは異なり、炎症を起こした際にSAA4の分泌が増加する可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、N末端領域にHisタグを有するnon-glycosylated SAA4を用い、Hisタグ付加の構造に及ぼす影響を検討する。これらの結果、どのような調製方法が最も適しているかを判断する。さらにその後、当初予定通り、会合性や脂質結合性などについて明らかにしていく。同時に、これまで具体的な検討のできていないglycosylated SAA4の準備に取り掛かる。また、SAA4の分泌量の変化に関しては、予想とは異なる結果が得られていることから、さらに異なる培養条件や各種ストレス条件などにおいて、SAA4の濃度やその糖鎖付加パターンを詳細かつ慎重に明らかにしていく。
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