アポリポタンパク質として脂質代謝を担う血清アミロイドA(SAA)にはいくつかの種類が存在する。関節リウマチなどの炎症性疾患に伴って血中濃度が著増し、AAアミロイドーシスの原因となる急性期型のSAA(主にSAA1)に比べ、SAA4は正常時の血中に高濃度で存在するにもかかわらず、生体内での機能や疾患との関連性が不明であった。本研究では、SAA4に焦点をあて、①まずはSAA4の基本的性質(構造・物性)を理解すること、②脂質代謝機能(生理的意義)に関する手がかりをつかむこと、③糖鎖付加の意義(特に病理的な意義)の解明につなげることを目的とした。今年度は、引き続き、肝臓由来の細胞株(HepG2)から分泌されるSAA4について調べた。細胞密度や細胞周期の影響、および低酸素誘導による影響についても検討を行い、変化が認められる場合も観察されたが再現性に乏しく、明確な発現変動を示す条件の確立には現在までのところ至っていない。また、前年度までのリコンビナントタンパク質の調製検討でHisタグの切断効率が低いことが課題となっていたため、アフィニティータグをGSTに変更し、大腸菌での発現から検討した。その結果、Hisタグに比べて切断効率が高くなることが示唆されており、今後、GSTタグ切断や精製の最適条件を調べ、構造解析を行うのに必要量のSAA4を準備する。研究期間全体として、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に前半は当初の計画通りに進行しなかったが、材料の準備や評価系の確立という点において進展があり、SAA4の基本的性質の理解と生理的・病理的意義の解明に向けた下地ができたと考えている。
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