研究課題
診断用抗体として、遺伝子操作による改変抗体に期待が寄せられている。天然型抗体を一本鎖Fvフラグメント (scFv) に変換したのち可変部に様々な変異を導入し、生じる多様な変異体の分子集団 (ライブラリー) の中から望みの抗原結合能を獲得した改良分子種を選択・単離することにより得られる。その効率を飛躍的に高めるために、新規な選択法、コロニーアレイプロファイリング (CAP) 法を独自に開発し、希少な改良型抗体を網羅的に単離する道を開いた。前年度はコルチゾールに対する変異scFvのライブラリーの検索に適用し、極めて良好な結果を得た。今年度は、エストラジオール (E2) に対するscFvの親和力の改善に応用し、やはり満足すべき成績を得ている。すなわち、マウス抗E2抗体のVHとVLの両ドメインを連結して作製した野生型scFv (Ka, 8.6×E+7 1/M) のVH相補性決定部3 (VH-CDR3;構造上多様性が高く、抗原結合能の発現に重要な役割を演じる) 内の15アミノ酸を系統的にランダム化した。生成する変異scFvの集団をファージ提示し、親和性成熟変異体をCAPで検索することにより、結合定数 (Ka) を野生型scFvのそれより90倍増大させる変異モチーフ (E100eN-I100fA-L100gQ) を見出した。この変異をもつscFvのVLドメインに先に我々が見出した変異モチーフ (I29V/L36M/S77G) を加えたところ、野生型scFvより372倍も高いKa (3.2×E+10 1/M)を示す変異体が得られた。このKa値は、これまでに報告された抗E2抗体の結合定数として最高である。本変異体を用いることで、極めて高感度なE2のELISA (検量線のIC50値4.5 pg、検出限界0.78 pg) が可能であった。以上の成果はすでに学術雑誌に投稿済みである。
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Scientific Reports
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