研究課題/領域番号 |
19K07023
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
竹下 啓蔵 崇城大学, 薬学部, 特任教授 (70175438)
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研究分担者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マトリックスメタロプロテアーゼ / がん / 電子スピン共鳴 / スピンラベル |
研究実績の概要 |
前年度までに、MMP活性の評価試薬(SL-PVGLIG-SMA/BSA複合体)を合成し、そのMMP特異性を確認できた。本研究では、MMPによる切断前後でのESRシグナル強度の変化を期待したが、上記方法では切断前のシグナル強度は期待したほど小さくなく変化がやや不明瞭であった。そこで、本年度は細胞系での切断実験と合成試薬のがん集積評価法の検討を行うとともに、切断前のシグナルをよりブロード化することを検討した。 (1) 細胞系での切断実験:ヒト乳がん細胞であるMCF-7細胞株とMDA-MB-231細胞株をそれぞれ96穴マイクロプレートに播種して培養し、SL-PVGLIG-SMA/BSA溶液を加えて反応させた。MCF-7では対象との間に明らかな違いは見られなかったが、MDA-MB-231では60分のインキュベートでシグナル強度が約1.4倍増加した。両細胞株でMMP-2生成量の定量値はMMP-2で明らかに多く、この違いがESRシグナルの変化に反映されたものと思われる。 (2) 高分子の腫瘍への集積評価法の検討:合成試薬の代わりにGd- diethylenetriamine-N,N,N’,N”,N”-pentaacetic acid (DTPA)を結合させたデキストランを用いて静脈内投与後の分布評価にMRIを用いたところ、がんへの集積を明確に評価できることがわかった。 (3) 切断前シグナルのブロード化の検討:MMP基質ペプチドPVGLIGとポリエーテルアミンの間にCys残基を入れたペプチを新たに合成し、これを架橋剤N-succinimidyl 3-maleimidopropionate を用いてタンパク質のアミノ基へ直接結合させた。合成試薬は依然ESRシグナルが高くMMP-2による切断実験ではシグナル強度の変化は約2倍程度であり、SMAを介した複合体の場合の変化率を超えるものではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度にマトリックスメタロプロテアーゼ活性評価プローブの検討に時間を要したこと、新型コロナウイルス感染症の拡大で思うように実験ができなかったこと、および、MMPによる切断前のシグナルを十分ブロード化するのに検討を要していることから、全体的に予定がずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
MMPによる切断前のESRシグナルをよりブロード化する方策として、これまでの回転相関時間変化に加え、ニトロキシルラジカルとは別の常磁性物質を同時導入することにより、スピン-スピン相互作用によりニトロキシルラジカルのESRシグナルのブロード化を増強する。具体的にはポリエーテルアミンのアミノ基にキレート剤 diethylenetriamine-N,N,N’,N”,N”-pentaacetic acid (DTPA)を結合させ、これにガドリニウム(Gd)を配位させる。この成績を確認した上で、細胞系、動物系へと実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度からの研究の遅れにより研究の進捗が全体的にうしろにずれ込んだことに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で卒業研究の学生の実験が思うように進まなかったことにより繰越金が生じた。 次年度は、繰越金はマンパワー確保のための学生アルバイト雇用、細胞培養実験に関わる培地や試薬の購入、およびマウスの購入に充てる計画である。
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