研究課題/領域番号 |
19K07024
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三重 安弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00415746)
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研究分担者 |
辻野 博文 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (10707144)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属蛋白質 / ナノ構造電極 / 電気化学アッセイ / 電子移動反応 / 酸化還元酵素 / サイトグロビン |
研究実績の概要 |
近年、 がん等の疾病と金属蛋白質との関連が明らかになってきており、その蛋白質機能・特性を分子レベルで理解することは、該蛋白質をターゲットとする創薬において重要である。しかしながら、機能発現に重要な金属の酸化還元(レドックス)状態を制御する良好な手法が確立されておらず、in vivoでの疾病との相関研究に比べ、その理解は遅れている。本研究では、ナノ構造電極を活用する電気化学法を用いて、創薬ターゲットとなる金属蛋白質のレドックス制御技術を開発し、該蛋白質機能の分子レベルでの理解を進展させることを主目的とする。 本年度(2年目)は、昨年度までに見出した酸化還元酵素の電気化学的な制御に有用なナノ構造電極を用いて、肝疾患など様々な疾患に関与すると考えられているサイトグロビン(Cygb)についての検討を主に実施した。作製したナノ構造電極上にCygbを種々の方法で固定化し電気化学計測を行ったところ、特定の固定法において明瞭な酸化還元応答を得ることができ、当該酵素の活性中心であるヘム鉄の酸化還元状態を電気化学的に制御することに成功した。得られた応答からCygbの電子授受速度を評価したところ、ニューログロビンなど他のグロビン蛋白質と比較して有意に(一桁)小さいことが明らかとなり、これらの酵素機能の相違に起因すると推察された。また、変異体を用いてCygbの亜硝酸還元活性を電気化学的に調査し、活性中心近傍のジスルフィド結合が当該活性に重要であることを明らかにした。加えて、高濃度の亜硝酸存在下では活性が減少する現象を見出すとともに、生成物である一酸化窒素が当該活性を阻害することを明らかにし、当該活性をチューニングする機構が示唆され、Cygbの機能解明に有用な知見を得ることができた。一方、昨年度までに作製した種々のナノ構造電極の中で、糖類の酸化反応等に有用な電極も見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに見出したナノ構造電極を用いて、肝疾患等に関連する蛋白質であるサイトグロビンのレドックス制御に成功するとともに、自身の電子移動キネティクスや基質に対する反応特性を電気化学的に分析することで、他の手法では得られ難い当該酵素の機能に関する分子メカニズムの一旦を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、金属蛋白質のレドックス制御に有用なナノ構造電極の詳細等について明らかにしていく。これまでのニューログロビンやサイトグロビン以外の疾患関連蛋白質についてもそのレドックス制御を調査し、機能の分子メカニズムを明らかにするとともに創薬へ展開するための技術開発も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定していた学会や会議・打合せ等に参加することができなかった。また、昨年度までに作製したナノ構造化電極の新たな活性・有用性を予期せず見出したため、次年度に検討することとした。 (使用計画)上記成果の学会発表や詳細な打合せのための旅費や、上述の昨年度までに作製したナノ構造電極の有用性等の詳細な調査を効率的に進めるための費用に充てる。
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