Polyglutamine tract-binding protein 1 (PQBP1) は逆転写されたHIV-1由来DNAの特異的補助受容体として機能し、サイクリックGMP-AMP合成酵素(cGAS)と複合体を形成してレトロウイルス感染に対する免疫応答を開始し、I型IFN産生を誘導することが明らかとされている。今年度は、ゲルシフトアッセイを用いてPQBP1のDNA結合がDNAの配列及び長さに依存するかを調べた。その結果、PQBP1とDNAの相互作用にはDNA配列依存性はないが、DNAの長さ依存性があり、DNAが長くなるに伴い結合親和性が高くなることが分かった。さらに、全ての長さのDNAにおいて、一本鎖DNAは同じ長さの二本鎖DNAより結合親和性が高いことが分かった。さらに、反応溶液中の塩濃度を変えてゲルシフトアッセイを行った結果、PQBP1とDNAの結合には静電的相互作用が重要であることが分かった。 PQBP1は、WWドメイン(WWD)、極性ドメイン(PRD)及びC末端ドメイン(CTD)の3つの機能ドメインを有する。PQBP1は天然変性タンパク質(intrinsicallydisordered protein; IDP)であり、生理的条件下においてWWDは構造をもつが、PRDとCTDを含むC末端側の180残基以上の領域は長い天然変性領域(intrinsically disordered region; IDR)であることが分かっている。本研究では、PQBP1(1-265)、PQBP1(1-94)、PQBP1(94-265)のDNA結合を調べた。その結果、N末端側の1-94残基とC末端側の94-265残基の両方が一本鎖DNAおよび二本鎖DNAの結合に関与するが、N末端側の1-94残基よりもC末端側の94-265残基のほうがDNA結合に重要であることが分かった。
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