研究課題/領域番号 |
19K07027
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋田 健行 九州大学, 薬学研究院, 助教 (50294963)
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研究分担者 |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10284522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HPLC / キラル / メタボロミクス / 固定相 / Pirkle / アミノ酸 / 生体試料 |
研究実績の概要 |
キラルメタボロミクスの飛躍的推進を可能とする二次元LC分離場ライブラリを構築し、これまで困難であった様々な微量鏡像異性体の生体中における存在や分布、機能の解明を推進するとともに、医療における新たなシーズ探索を加速することを目的とし、以下の研究を行った。 (1)様々なキラルセレクターを持つ多数の新規Pirkle型キラル固定相を合成し、HPLCマイクロカラムを作製した。そのうち3種の有望なキラル固定相を用いて、代表的なアミノ酸のキラル分離の検討を行った。その結果3種とも、多数のアミノ酸において、既存のPirkle型固定相に比較して高い分離係数を示した。これらの新規固定相は既存の固定相では十分な分離が得られなかった生体内微量鏡像異性体のキラル分離に有用であると考えられる。 (2)また、様々な条件でPirkle型キラル固定相の合成を行うことにより、アミノプロピル基残存量およびキラルセレクター導入率を再現性良くコントロールでき、キラル固定相の分離度の向上や、保持力の制御が可能となることが示された。この知見は、様々な生体内微量鏡像異性体の多次元キラルHPLC分析に有用であると考えられる。 (3)上記の二つの研究より得られたマイクロカラムを既存のマイクロカラムと併せ、分離場ライブラリを構築した。また、これを応用して多次元HPLCシステムを構築し、ヒト血漿中D-セリンの迅速分析法やマウス大脳中の酸性アミノ酸分析法を開発した。 今後は、(1)、(2)の研究成果を組み合わせることにより、分離場ライブラリの大幅な拡充が可能となり、これを用いて様々な生体内微量鏡像異性体のキラルメタボロミクスのさらなる推進が見込まれる。これは、様々な疾患に対する創薬シーズや診断マーカーの探索を加速し、人類の健康増進につながる重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画調書中の「どのように明らかにするか(本研究の方法)」における、【1.HPLC用キラル固定相の合成と分離場ライブラリの構築】(主に2019年度を予定、2020,2021年度にも追加)について、 (1)様々なキラルセレクターを持つ多数の新規Pirkle型キラル固定相を合成し、HPLCマイクロカラムを作製した。そのうち3種の有望なキラル固定相を用いて、代表的なアミノ酸のキラル分離の検討を行った。その結果3種とも、多数のアミノ酸において、既存のPirkle型固定相に比較して高い分離係数を示した。これらの新規固定相は既存の固定相では十分な分離の得られなかったアミノ酸や他の生体内微量鏡像異性体のキラル分離に有用であると考えられる。 (2)また、様々な条件でPirkle型キラル固定相の合成を行うことにより、アミノプロピル基残存量およびキラルセレクター導入率を再現性良くコントロールでき、キラル固定相の分離度の向上や、保持力の制御が可能となることが示された。 (3)上記の二つの研究より得られたマイクロカラムを他の当研究室オリジナルなPirkle型固定相を持つマイクロカラムと併せ、分離場ライブラリを構築し、様々な実試料中の微量鏡像異性体分析法の開発を行っている。 また、【2.二次元HPLCシステムの設計・作製】(2019年度を予定)、【3.実試料分析法の開発】(2の終了後2019~2021年度を予定)について、上記研究により得られた分離場ライブラリを利用して二次元HPLCシステムを構築し、ヒト血漿中のD-セリンの迅速分析法を開発するとともに、さらに多次元HPLCに拡張し、マウス大脳中のD-グルタミン酸、D-アスパラギン酸の分析法を開発した。 これらの事から、本研究課題は2019年度中の研究計画を十分に達成しているといえるため、「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究実績(2)における、アミノプロピル基残存量およびキラルセレクター導入率の制御は、様々なキラルセレクターを持つPirkle型固定相について同様に適用ができる。つまり、これを既存のキラルセレクターを持つ固定相及び上記実績(1)における新規固定相について適用し、それぞれのキラルセレクターでアミノプロピル基残存量及びキラルセレクター導入率の異なる様々な固定相を合成することが可能である。これにより、高いキラル分離能を持ち、かつ異なった保持特性や分離特性を持つ多数の固定相を得ることができ、分離場ライブラリの大幅な拡充が可能となる。このように拡充された分離場ライブラリより、分析対象化合物のキラル分離能、試料マトリックスによる夾雑化合物の違い、必要とする分析時間などの要求により、柔軟に固定相を選択することが可能となる。 そこで2020年度以降は、上記方法を用いることで、当初の研究計画調書中の【1.HPLC用キラル固定相の合成と分離場ライブラリの構築】に記載の通り、二次元LC分離場ライブラリの拡充を行う。また、【3.実試料分析法の開発】に記載の通り、これを用いて実際に臨床試料として最も汎用されるヒト尿試料や血漿試料、ヒト疾患モデルとなるマウスやラット試料などの実試料中のキラル低分子化合物群の網羅的定量を可能とする分析法の開発を行う。さらに、開発した分析法を用いて、ウイルス感染症を含む様々な疾患に対する創薬シーズや診断マーカーの探索を加速し、人類の健康増進に貢献するために今後の研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
HPLC移動相用溶媒や合成試薬・溶媒などの消耗品類、カラム充填のための旅費、充填料は研究の進行に応じて、随時購入、執行していくため、研究開始前の正確な見積もりが困難で、実際の使用額と当初見積もりが異なった。次年度の研究計画について変更はなく、次年度使用額は少額であるため、研究の進行に応じて適宜、次年度の消耗品購入、カラム充填費用に充てる予定である。
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