これまで困難であった様々な微量鏡像異性体の生体中における存在や分布、機能の解明を推進し、医療における新たなシーズ探索を加速するため、これまでに構築した二次元LC分離場ライブラリおよび、その過程で得られた知見をもとに以下の研究を行った。 (1)前年度までに構築した二次元LC分離場ライブラリを用いた多次元HPLCシステムにより、様々な実試料中のキラルアミノ酸の分析法の開発を行った。例として、Singularity CSP-013Sを用いたヒト血液および尿中におけるヒドロキシアミノ酸の高分離能キラル分析法や、タンパク質中のAsn/AspおよびGln/Glu残基の微量分析法、Singularity CSP-011Sを用いたタンパク質中の異性化システイン残基の定量法などの開発があげられる。 (2)これまでの研究で得られた知見を用いてキラルセレクターの構造を精査することにより、さらなる高性能二次元LC分離場の開発と評価を行い、二次元LC分離場ライブラリの拡充を行った。例として、令和2年度の実績として報告した高性能固定相をさらに改良した新規超高性能キラル固定相Singularity CSP-403Sを開発した。この固定相は、様々なNBD-アミノ酸に対し、既存のキラル固定相を遥かに凌ぐキラル分離能をもつ。これを用いて、これまで困難であった、グリシン含有ジペプチドの光学分割法を開発した。 (3)また、開発した高性能キラル固定相を用いて、キラルアミノ酸分析の社会実装に向けた、迅速分析法の開発を行っている。 今後は、これらの研究成果を応用することにより、キラルメタボロミクスの飛躍的推進が可能となる。これは、生体中における微量鏡像異性体の機能解明や、様々な疾患に対する創薬シーズや診断マーカー探索の加速を通じて、人類の健康増進につながる重要な成果である。
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