研究課題
生きている1個の細胞内のミトコンドリアを選択的に採取・質量分析し、ミトコンドリアに局在する代謝物を網羅的に解析するミトコンドリオミクスの実現のため、サンプリング方法及び高感度質量分析法の開発を行った。2019年は、ミトコンドリア内に局在する代謝物を選択的に誘導体化するミトコンドリア局在光反応プローブを開発した。2020年は、1細胞質量分析法によるミトコンドリアの選択的サンプリング方法の開発と、高精度質量分析法の開発を中心に行った。共焦点細胞イメージング装置を用いて蛍光染色したミトコンドリアを、先端口径2~3μmのナノスプレーチップを用いてサンプリングを行ったところ、細胞の大きさが15μmほどであれば、再現性良くミトコンドリア部位をサンプリングし、質量分析することができた。また、夾雑イオンによるイオン化効率の低下やデータのばらつきを防ぐため、複数の安定同位体標識体を内標準物質として用い、データの正規化を行った。さらに、エレクトロスプレーイオン化の際のインソースフラグメント化メカニズムの影響についても検討を行い、ダイレクト質量分析における分析基盤を整備した。2021年はミトコンドリア内の主要代謝物であるTAC回路上の有機酸を高感度分析するために、これらの代謝物のカルボキシ基に対してカチオン性の官能基を持つ誘導体化試薬と反応させ、ポジティブイオンモードで高感度に質量分析するための方法を開発した。本方法を1細胞質量分析に適用した結果、誘導体化によって100倍以上の高感度化を達成した。さらにがんおよび正常細胞を用いて検出された代謝物を比較したところ、両細胞間で特徴的なピークパターンが確認されたことから、がん化することによりミトコンドリアの化成が変化することが示唆された。今後は更なる改良を行い、がん細胞の主要代謝物の代謝動態を解明し、病態解明や治療法や診断法の開発へと繋げていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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