研究課題/領域番号 |
19K07029
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
合田 浩明 昭和大学, 薬学部, 教授 (60276160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HLA / 抗原ペプチド / データベース / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年までに確立した方法ならびに解析手順に基づき、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるHLAクラスI分子のアレルの一つであるHLA-B*57:01について詳細な解析を行った。すなわち、昨年度までに解析を行ったポケットFに加えて、HLA-B*57:01のポケットA~Eについても、同様の解析を行った。この結果、HLA-B*57:01のポケットA, C, D, およびEは、多様なアミノ酸残基を結合し得るが、ポケットBとFは、特定のアミノ酸残基を結合する傾向が示唆された。ポケットBは、Ala、Ile、Leu、Thr、ValおよびSerなどを、ポケットFはLeu、Phe、Val、Trp、Tyrなどを結合しやすい傾向がみられた。すなわち、ポケットBとFは、他のポケットに比べて特異性が高く、HLA-B*57:01によるペプチド認識における重要性が高いと考えられる。これは先行研究において提唱されている、「ポケットBとポケットFへ結合するアミノ酸残基が、HLAによるペプチド結合の際のアンカーになる」というモデルに矛盾しない結果である。先行研究では、限られた数の結晶構造に基づいて推定したにすぎないが、本研究では約600個の構造データに基づいて、同モデルの妥当性を示すことに成功したと言える。さらに、ポケットA~Eには、アバカビル結合に伴うポケットの物理化学的性質の変化はほとんど見られないことがわかった。従って、アバカビル結合によるポケットFの物理化学的環境の変化によって、HLA-B*57:01が認識するペプチドのアミノ酸配列がアバカビル結合により変化すると考えられる。以上、HLA-B*57:01/抗原ペプチド相互作用の全体的な特徴を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに確立した方法ならびに解析手順に基づき、HLA-B*57:01について、すべてのポケットに対し網羅的な解析を実施した。この結果、HLA-B*57:01/抗原ペプチド相互作用の全体的な特徴を得ることができた。また、HLA-B*57:01を対象として具体的な解析計算を実施することで、本研究で考案した方法の適用方法や応用可能性について検証することができた。以上の実績より、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた成果を誌上発表するために、論文執筆を行う。執筆にあたり必要となる補助データの解析や、解析条件を変更した再計算などを実施し、計算結果の妥当性・再現性の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果を論文としてまとめるために研究期間の1年延長を申請した。それに伴い、主に論文発表ための次年度使用が生じた。論文の校正、および投稿料などに使用する予定である。また、論文執筆にあたり必要となる補助データの解析や、解析条件を変更した再計算などにも必要に応じて使用する予定である。
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