核酸アプタマーは、抗体が標的にできない分子種も創薬ターゲットとできること、迅速かつ大量に供給できるというパンデミックにも対応できることなどから、次世代の抗体分子として注目されています。試験管内進化(SELEX)法という卓越したスクリーニング法により候補分子を獲得しますが、開発の過程で膨大な候補の結合解析が必要で、簡便な解析方法が求められています。本研究では、独自の光化学的新技術を核酸アプタマーに導入し、スクリーニングから候補の絞り込みまでの過程を加速する技術を確立することを目的としました。 まず、核酸アプタマーに光反応基を導入する技術を確立しました。チオールの反応性が高いことを利用し、核酸アプタマーの任意の部位にキー化合物である光反応基を組み込むことができます。光反応基は数分の光を照射するだけで、その場の結合状態を共有結合で固定化できる能力を持ちます。この性質を利用すれば、高い分離能力をもつ変性状態での解析が可能となり、簡便な結合解析法を開発することができます。 解析法の開発には、既報のトロンビンに対するDNAアプタマーを用いました。トロンビンは、プロトロンビンからファクターXaの切断によって生成されますが、試験管内ではサイズの少し異なる3種のトロンビンを生じました。光反応基をもつアプタマーを用いると、変性条件での電気泳動上で、複数の対象の結合解析を同時かつ簡便に実施することができました。膨大な候補の結合解析が簡易な電気泳動で解析できることは、絞り込みの過程を大いに加速すると言えます。 光化学的技術をSELEX法に応用するための準備として、光反応基をもつアプタマーに結合する提示ファージのクローニング法に挑戦していますが、結果がばらつくことが多く、最適化に時間がかかっています。さらに研究を進め、スクリーニングから候補の絞り込みまでの過程を加速する方法の開発を目指したいと思います。
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