研究課題/領域番号 |
19K07034
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
古林 呂之 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (00399156)
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研究分担者 |
田中 晶子 神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (30824320)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鼻腔内投与 / 頸部リンパ節 / ペプチド / 粉末製剤 / Oxytocin / Cyclosporine A |
研究実績の概要 |
2019年度は、まず、モデルペプチドの粘膜上での溶解プロファイルを明らかにするために、顕微ラマン分光測定器を用いて、定法に従い作製したCalu-3培養細胞層上に噴霧した粉末状モデルペプチドの経時的な粒子形状の変化を撮像した。高い溶解性を有するoxytocinは、噴霧後、直ちに溶解し、噴霧5分後にはoxytocinの粒子は観察されなかった。また、Calu-3細胞層透過性も比較的良好であることが示された。一方、溶解性が極めて低いシクロスポリンAでは、形状変化はほとんど観察されず、また、cyclosporine Aの粘膜上での溶解を促進するために、粘膜上水分を増加させる乳糖や塩化ナトリウムを添加しても溶解性はほとんど変化しなかった。Cyclosporine Aの溶解度は、pHにほとんど影響されないことから、鼻腔内投与後の粘膜透過量を改善するためには、粘膜への傷害性を示さない溶解補助剤、例えばemulsion製剤化等の必要性が示された。 比較的良好な膜透過を示したoxytocinについて、マウスの鼻腔内に投与した群及び急速尾静脈内投与群における血漿中濃度推移から吸収率を算出すると、oxytocinの経鼻吸収率は約1%となり、リンパ節中には検出されなかった。経鼻吸収率が低いことから、頸部リンパ節中へのoxytocinの移行は極めて低く、添加剤による吸収量の改善及び定量法の改善を並行して進めることとした。 現状の結果から、モデルペプチドの物理化学的性質と頸部リンパ節移行動態の関係をより詳細に考察するためには、oxytocin及びcyclosporin Aの中間的な溶解度を示すモデルペプチドの新たな選定が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頸部リンパ節中oxytocinの定量感度が予想以上に低く、投与量の増量や定量条件の改善に時間を要した。また、2,3月に予定していた実験が、新型コロナウイルス感染拡大防止措置ため進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Oxytocinの頸部リンパ節移行性改善を図るために、吸収促進作用を有する製剤添加物の利用を検討する。CyclosporineAは、自己乳化型エマルション製剤とするなど、溶解性の改善を図り、頸部リンパ節移行の可否を確認する。また、モデルペプチドにIn標識をし、SPECT-CTによるイメージング観察を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者及び分担者が参加を予定していた日本薬学会年会が新型コロナウイルスの影響で中止となり、旅費等の支出分が残った。
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