本研究は、「異物センサー」として機能する核内受容体PXRとCARが、パートナー受容体RXRαとどのように協働するのか、その分子機序を明らかにすることを目的とする。前年度までに、標的DNA応答配列を組み込んだレポーターコンストラクトにおいて、ヒト型PXRとマウス型CAR各々のRXRαとのヘテロ2量体は、①各々が、活性化状態にある場合、RXRαアゴニストに応答し、RXRαAF2ドメインへの変異導入がその応答性が消失させること、②CARの場合、コアクチベーターとの組み合わせによりRXRαアゴニストに対する応答性が異なること等を見出した。今年度は、各々のリガンド結合ドメインをGAL4 DNA結合ドメインに融合したワンハイブリッド系を用いて、ヘテロ2量体の各々アゴニストに対する応答性を明らかにした。また、前年度に見出した新規な構造のRXRαアゴニストに対する両ヘテロダイマーの応答性を検討し、CARの場合、既知物質と同様に応答することを確認した。加えて、コアクチベーターとの結合解析等、インビトロ解析での利用を目的に、大腸菌発現系を用いた組換えPXR及びRXRα蛋白質の調製法の検討を進め、コドン最適化や可溶化タグ付加により両蛋白質の可溶性画分での発現効率を向上させた。今後、継続して調製法の確立を進める。並行して、前年度に引き続き、共役因子との相互作用に基づくPXRと化学物質とのインビトロ相互作用評価系の構築を進め、コリプレッサー配列の付加やアミノ酸変異導入によりセンサー蛋白質の構造を最適化し、また、大腸菌発現系での組換え蛋白質調整法の検討を進めた。本研究では、RXRαとの「協働」という点からPXRとCARによる転写調節のメカニズムの解析を実施し、化学暴露に対する応答機構を理解する上で有用な知見を得ると共に、それらの機能に基づいた新しい化学物質との相互作用評価法を構築した。
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