本年度は③小胞体ストレスがBAP31に与える影響の解析と④BAP31ノックアウトマウスの解析を行った。③については小胞体ストレスによりBAP31-Tom40複合体の形成が阻害されることが示唆されたのでのそのメカニズムについて解析した。まず免疫沈降法と免疫染色法によりBAP31-Tom40複合体の形成が小胞体ストレスにより阻害されることを確認した後、小胞体ストレスによりBAP31の何が変化してこの複合体が崩壊するかを、細胞免疫染色法によりBAP31の細胞内局在を詳しく調べた。その結果、小胞体でのBAP31の局在が通常状態では滑面小胞体と粗面小胞体の両方にあったものが、小胞体ストレスによりその局在が粗面小胞体のみになった。これは滑面小胞体がミトコンドリアとの接触に重要であるため、そこからBAP31の局在が減少することで、BAP31-Tom40複合体が崩壊している可能性を示唆する結果である。なぜBAP31の局在が変化するのかについては検討中である。 ④については、BAP31コンディショナルノックアウトマウスと神経細胞特異的且つタモキシフェン特異的にCre活性を発現するNestin-Cre(タモキシフェン活性化型)マウスを掛け合わせることで神経細胞特異的なBAP31ノックアウトマウスを作成してニューロパチー様の運動障害が起こるかを調べようと試みた。マウスを構築することができ胎生期にタモキシフェンを投与することでBAP31をノックアウトしようしたが、マウスの正常な発育は見られずそのまま耐性致死となり当初の予定していた解析はできなかった、少なくともマウスにおいてはBAP31は神経細胞の生育と形成に重要な働きがあることが示唆された。
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