研究課題/領域番号 |
19K07055
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
中山 祐治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (10280918)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チロシンキナーゼ / 細胞分裂 / EphA2 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に従い、以下の実績を得た。 (計画1)EphA2のキナーゼ活性がEphA2による細胞分裂制御に関与するのか、キナーゼ活性不活化変異体を作成し検討した。EphA2遺伝子のAsp739を部位特異的変異導入によりAsnに変異させ、ウイルスベクターに組み替えて目的の変異をDNA配列解析により確認した。レンチウイルスにより遺伝子をHeLa S3細胞に導入し、ピューロマイシンによりキナーゼ活性不活化変異体を誘導発現する細胞を樹立した。オープンリーディングフレーム外の配列を標的としたsiRNAを用いて内在性EphA2をノックダウンすると、これまで観察していた細胞分裂遅延が観察されたが、キナーゼ活性不活化変異体を発現させると、内在性EphA2のノックダウンによる細胞分裂遅延が解除された。これらの結果は、EphA2による細胞分裂制御に、EphA2のキナーゼ活性は必要ではないことを示している。また、リン酸化したEphA2の細胞内局在を調べるため、Ephexin4の遺伝子導入により、Ephexin4の細胞内局在を調べた結果、細胞膜への局在が観察された。 (計画2)EphA2の細胞質分裂への関与を調べるためには、細胞質分裂の失敗により形成する多核細胞を正しく評価しなければならない。まずは、βカテニンの免疫染色や細胞膜脂質の色素染色により、細胞形態を詳細に調べる方法を検討した。その結果、βカテニンの染色により細胞形態が正確に識別され、多核細胞の形成を評価できることがわかった。 (計画3)CDK1阻害剤であるRO-3306を用い、IGF1R、ALKチロシンキナーゼの阻害剤が細胞分裂に与える影響を調べた結果、細胞分裂遅延が観察された。 (計画4)チロシンキナーゼ活性化型変異体としてv-Srcを用い、足場非依存増殖への寄与を調べた結果、v-Srcの発現によりコロニーの形成が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度、計画1について、キナーゼ活性の寄与について既に結果が得られ、また、局在解析については、Ephexin4の全長を用いることで膜局在を示す結果を得ており、初年度の目標が達成できている。計画2については、評価方法の検討が終了したため、これを用いて解析すれば結論に達する。計画3では、阻害剤を用いた検討が終了しており、ノックダウンにより確認する。計画4では、v-Srcを用い期待通りの結果が得られている。以上より、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の結果を受け、次のように進めていく。 (計画1)キナーゼ活性不活化変異体については、さらにLys646Met変異体を用いて解析する。得られた変異体については、DNA配列解析に加えて、in vitroキナーゼアッセイなどにより機能的に変異導入を確認する。リン酸化EphA2の局在については、HAタグあるいはEGFPを融合したEphexin4、あるいはEphexin4の一部を用い検討する。また、CDK1、EMK/ERK、RSKの阻害剤を用い、Ser897リン酸化への依存性を調べる。 (計画2)構築した方法に基づき、細胞質分裂に対する影響を調べる。内在性のEphA2のノックダウンによる影響を調べたのち、野生型、および、キナーゼ活性不活化変異体でレスキュー可能か調べる。 (計画3)ノックダウンにより細胞分裂への影響を調べる。 (計画4)v-Srcの細胞分裂異常を介した癌化機構として、足場非依存増殖への影響を引き続き調べる。また、tetraploid checkpoint に対する抑制効果を報告しているが、その経路の中心的なキナーゼであるLATS2への影響を調べ、癌化におけるv-Srcの役割をさらに詳細に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り使用したが、すでに保有している抗体や試薬などに置き換えられるものもあったため、全てを使用するに至らなかった。次年度も同様に計画通り使用していく。
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