研究課題
これまで、受容体型チロシンキナーゼVEGFR、ALK、IGF1Rの阻害が細胞分裂異常を誘導することを報告してきた。その過程で、IGF1Rの阻害をAuroraB阻害と併用すると、非常に強い細胞増殖抑制効果を示すことを見出した。そこで、その機構の解明を目指した。IGF1R阻害剤としてOSI-906、Aurora B阻害剤としてZM447439を用いた。併用すると、経時的に中心体の増加を伴い多核細胞数が増加し、同時にcaspase-3陽性のアポトーシス細胞数も増加した。フローサイトメトリーで解析すると、DNA含量が増加していることがわかり、多核細胞の増加は、細胞質分裂の失敗が原因であることが示唆された。CDK1阻害剤であるRO-3306を用いて阻害剤併用が細胞分裂進行に与える影響を調べると、阻害剤併用により染色体整列が著しく遅延した。time-lapse imagingを行うと、染色体整列が少し遅延した細胞では中期から後期への移行遅延が観察されたが、染色体整列が著しく遅延した細胞では、染色体を分配せずに細胞分裂を終了し間期へ移行するslippageが観察された。slippageの原因を調べるためEg5阻害剤STLCを用いて細胞分裂期に同調し、阻害剤を併用処理してcyclin B1発現レベルを解析した。その結果、コントロールと比較し、併用によりcyclin B1発現レベルが低下することがわかった。このとき、プロテアソーム阻害剤であるMG-132を加えるとこの減少は消失し、異常な細胞核を持つ細胞数も減少した。以上より、OSI-906とZM447439の併用は、染色体整列異常を誘導するとともにcyclin B1の早期の分解を誘導することで、slippageを引き起こすことが明らかになった。その結果形成する多核細胞は染色体不安定性を示すことが知られており、細胞分裂異常を介した多核細胞の形成が、併用処理により誘導された著しい細胞増殖抑制効果の原因であることが示唆された。
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