研究課題/領域番号 |
19K07057
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
室冨 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40635281)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一重項酸素 / 酸化ストレス / 活性酸素種 / NASH |
研究実績の概要 |
本研究では生体内あるいは細胞内における一重項酸素の機能を探求し、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等の疾患発症に一重項酸素が関与するのか、という仮説を検証する。 令和2年度は、半減期が極めて短い一重項酸素を細胞内で安定して測定する方法を開発し、論文として成果を発表した (Murotomi et al., Sci Rep., 2020)。具体的には、ミトコンドリアに集積する一重項酸素検出プローブSi-DMAおよび 熱分解により一重項酸素を発生するエンドパーオキシド(EP)を用い、細胞内の蛍光強度を測定した。培養液や細胞内での一重項酸素の消失は、数ミリ秒以内に生じると予想されるため、蛍光強度の経時変化を追跡できるタイムラプスイメージングを用い、 一重項酸素消去剤アジ化ナトリウムの影響を解析したところ、濃度依存的に蛍光強度は低下した。さらに、in vitroで一重項酸素消去活性が高いと報告されてい るアスタキサンチンを前処置すると、EP添加後の一重項酸素産生が有意に抑制された。以上の結果、EPとSi-DMAを用いたタイムラプスイメージングにより、安定 して細胞内一重項酸素発生量を測定できることが明らかとなった。 次に一重項酸素の細胞への影響を解析するために、一重項酸素発生後の細胞死率とROS産生量を測定した。その結果、0.5および1.0 mM EP添加によって、約1時間後に細胞内でROSが産生され、いずれの濃度でも細胞死が誘導された。興味深いことに、0.5 mM EPでは一過的に細胞死が誘導されたものの、その後細胞増殖が亢進している可能性が示唆された。さらに、0.5および1.0 mM EP添加後の細胞応答を解析するために、マイクロアレイを行なった。今後、網羅的遺伝子発現解析結果を精査し、一重項酸素発生後にどのようなシグナル伝達が誘導されるかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞内一重項酸素測定方法に関する結果は論文発表に至り、一重項酸素によって誘導される細胞障害メカニズム解析結果まで得られており、計画通り研究が進んでいるため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は主に以下の2点について研究を行い、論文投稿まで進めたいと考えている。 ・一重項酸素発生による細胞障害メカニズム解明 ・NASH模倣条件下で、細胞内一重項酸素発生量の経時変化測定
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による試薬・物品の納期遅延やテレワーク等で、研究活動が制約されたため、一部の研究を次年度に持ち越すことにした。
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