研究課題/領域番号 |
19K07058
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
今江 理恵子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60584000)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CDP-グリセロール / α-ジストログリカン / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
細胞において、CDP-グリセロールの合成を減少させることで、グリセロールリン酸含有糖鎖の生物学的役割の解析が可能となると考えられる。一方、細胞表面タンパク質であるα-ジストログリカンの糖鎖は、ラミニンなどの細胞外マトリックスの受容体となるが、この糖鎖にグリセロールリン酸が含まれた場合には、ラミニンとの結合部位となる先端部分の糖鎖構造が形成されないことがin vitroにおいて明らかになっている。そこで、実際に細胞内に存在するCDP-グリセロールが、α-ジストログリカンのラミニン結合性糖鎖形成を阻害する役割を果たしているのか検討した。これまでに、CDP-エタノールアミンの合成酵素であるPCYT2が、グリセロール-3-リン酸とCTPを基質としてCDP-グリセロールを合成する酵素であることを同定している。細胞においてPCYT2を発現抑制し、CDP-グリセロールの量を顕著に減少させた条件下でα-ジストログリカンの糖鎖について調べたところ、ラミニン結合性糖鎖の合成が亢進していることが明らかになった。さらに、α-ジストログリカンの量自体も増加していることが分かった。このα-ジストログリカン量の増加は転写後の調節機構であったことから、例えばグリセロールリン酸修飾によりタンパク質の安定性に影響する可能性などが考えられる。以上の結果から、細胞内のCDP-グリセロールは、α-ジストログリカンの糖鎖合成およびタンパク質レベルでの発現制御を介して、α-ジストログリカンの機能を抑制していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α-ジストログリカンの糖鎖は、これまでに見つかっている唯一のグリセロールリン酸含有糖鎖であり、細胞内CDP-グリセロールの量を減少させることで、この糖鎖のグリセロールリン酸含有率が減少することが予想された。本研究により見出したCDP-グリセロールの合成酵素の発現抑制により、実際にそのような制御があることを細胞レベルで示した。この結果より、グリセロールリン酸修飾がα-ジストログリカン機能を負に制御することを示すことができ、グリセロールリン酸含有糖鎖の役割の一端を明らかにできた点で大きな進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CDP-グリセロール/グリセロールリン酸含有糖鎖の生物学的意義をさらに明らかにするために、細胞内CDP-グリセロールの量を制御した時の細胞の表現型を調べる。また、その表現型がα-ジストログリカンを介しているのかどうか解析する。α-ジストログリカン以外の別の分子を介していることが判明した場合、その分子の同定を行い、分子機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行う予定であったグリセロールリン酸含有糖鎖を持つタンパク質群の同定を翌年度に行うこととしたため。翌年度はこの解析も合わせて、当初の計画通りに研究を進める予定である。
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