研究課題/領域番号 |
19K07059
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
伊東 秀記 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 室長 (40311443)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海馬 / 神経発達障害 / 歯状回 / 神経発生 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、神経発達障害関連分子CNK2の発現を抑制すると、新生仔マウスの歯状回顆粒細胞の配置異常が観察されることを明らかにした。また、CNK2結合分子の一つであるCYTH2の発現を抑制した場合にも同様の現象が観察されることを明らかにした。今年度は、CNK2およびCYTH2による歯状回発達制御の分子機構の解析を行った。 CNK2との複合体形成が報告されているCYTH2、ARHGAP39およびARHGEF7をCNK2とともにCOS細胞に発現させ、免疫沈降実験を行ったところ、CYTH2およびARHGAP39とCNK2の共沈降を確認できたが、ARHGEF7の共沈降は確認できなかった。このとき、CYTH2およびARHGAP39は、CNK2の発現を上昇させており、特にCYTH2の影響が顕著であった。CNK2の発現は、プロテアソーム阻害剤であるMG132によって増加したが、CYTH2を発現させた場合にはMG132による増加作用は見られなかった。これらのことから、CYTH2は、CNK2のプロテアソームによる分解を抑制することによってCNK2を安定化していると考えられた。 次に、CNK2を選択的に認識する抗体を作製し、脳内での発現分布をウェスタンブロット法により解析したところ、大脳皮質と海馬での発現が高いことがわかった。大脳皮質と海馬の抽出液を用いてCNK2を免疫沈降したところ、CYTH2の共沈降が観察された。また、免疫組織化学法により生後30日のマウス海馬でのCNK2およびCYTH2の発現を解析したところ、歯状回顆粒細胞から海馬CA3領域へ投射する苔状繊維での発現が観察された。 以上のことから、CNK2はCYTH2により安定化され、歯状回顆粒細胞の発達を制御していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経発達障害関連分子CNK2の機能解析を行い、結合分子の一つであるCYTH2と協調して、新生仔マウスの海馬歯状回の発達を制御していることを明らかにできた。そして、研究成果を取りまとめて論文を投稿できる段階まで到達した。これらのことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
神経発達障害関連分子CNK2およびその周辺分子の神経系組織おける発現を、主に組織学的手法により詳細に解析していく予定である。また、最近着手した神経発達障害関連Rac変異体の機能解析を、in vitroからin vivoにわたる多面的な手法により進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等を予定よりも低予算で調達できたため、次年度使用額が生じた。次年度は、本実験計画と関連した新たな研究課題に着手するため、本年度よりも多くの予算が必要となる予定である。限られた予算を有効に使用していきたい。
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