研究課題/領域番号 |
19K07059
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
伊東 秀記 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 室長 (40311443)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達障害 / 海馬 / アダプター分子 / 歯状回 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、新生仔マウスを用いたin vivoエレクトロポレーションによる遺伝子導入法を用いて、歯状回顆粒細胞前駆細胞において発現するX連鎖知的障害原因遺伝子CNKSR2の発現を抑制すると、生後21日目では顆粒細胞層と歯状回門の境界領域に局在する神経細胞が増加することを報告している。今年度は、主に形態学的な解析により、出生後の歯状回顆粒細胞の発達におけるCNKSR2の機能解析を行った。まず、CNKSR2の発現抑制による歯状回顆粒細胞の配置異常のメカニズムを明らかにすることを目的に、生後0日でノックダウンベクターを遺伝子導入し、7日後に標本を作製し解析を行った。その結果、CNKSR2の発現が抑制された顆粒細胞前駆細胞の配置異常は見られなかった。このことから、CNKSR2は、神経細胞前駆細胞の歯状回神経上皮細胞層から歯状回への移動ではなく、歯状回へ到達後の歯状回門から顆粒細胞層への移動の段階で機能していると考えられた。一方、生後21日目に神経細胞の形態を解析したところ、コントロールの細胞では、歯状回門へ伸長する軸索と分子層に高度に分岐した樹状突起が見られたのに対し、CNKSR2の発現が抑制され配置が異常となった細胞は、極性が乱れており、突起伸長に異常が見られた。また、神経細胞のマーカーであるNeuN、歯状回顆粒細胞のマーカーであるProx1および成熟歯状回顆粒細胞のマーカーであるカルビンディンの発現が低下していた。これらのことから、CNKSR2は、歯状回顆粒細胞の分化や神経突起の形成において機能していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNKSR2は、ARF1の活性化因子であるCYTH2と協調して、出生後のマウス海馬歯状回顆粒細胞の発達を制御していることを明らかにし、研究成果を取りまとめて学術論文として公表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
海外の研究グループとの共同研究により、X連鎖知的障害の患者において、これまでに報告のないCNKSR2の変異を見出している。今後、この新規変異が分子機能や神経発達に及ぼす影響について解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文発表のための追加実験に時間がかかり、これまでに購入した試薬等を使用する機会が多く、予想よりも新規に物品を購入する必要がなかったために次年度使用額が生じた。今年度は、主に、CNKSR2の新規変異体の解析に研究費を使用する予定である。
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