すべての哺乳動物の脳において、非ヒト型シアル酸分子種(Neu5Gc)は生合成されることはない。研究代表者はNeu5Gcのラット体内動態を分析したところ、末梢から脳へNeu5Gcが移行することを見出した(Taguchi et al., 2015)。糖鎖からシアル酸を外す酵素(シアリダーゼ)は記憶形成に不可欠であるが、Neu5Gcはこのシアリダーゼの働きを競合的に阻害する。このことから、脳に移行するNeu5Gcは認知機能に影響することが推定された。本研究において、記憶におけるNeu5Gcの機能を検討したところ、Neu5Gcは海馬依存性の記憶やシナプス可塑性に重要な役割を担うことが明らかとなった。
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