研究課題/領域番号 |
19K07067
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 佐生智 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (70308013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 細菌毒素 / マスト細胞 / 好塩基球 / アレルギー |
研究実績の概要 |
黄色ブドウ球菌は健常人にも存在する常在性菌であるが,多彩な毒素を産生することが知られている.毒素の機能については古くから研究がなされているが,いまだ生理機能が明らかにされていない毒素も存在している.一方で本菌はアトピー性皮膚炎患部において高頻度で検出され,免疫アレルギー疾患との関係が指摘されている.このことから本菌が毒素を介して免疫アレルギー疾患の発症増悪にかかわる可能性が指摘されていたが,特定の毒素によるアレルギーの発症メカニズムについてはδ毒素を除けは報告がなされていない.研究代表者は本菌の産生する溶血毒素やその他の免疫かく乱毒素の,各種免疫細胞の機能に及ぼす影響を検討し,毒素を介した本菌の免疫アレルギー疾患発症増悪機構の存在を明らかにすることを目指した.昨年度までに14種からなる免疫かく乱毒素Staphylococcal superantigen-like(SSL)ファミリーに属する毒素SSL12と溶血毒素αヘモリジンがマスト細胞の脱顆粒を誘導,または促進することを示している.本年度はSSL12がマウス骨髄から誘導した好塩基球に対し,Th2型の免疫応答を促進するサイトカインIL-4の産生を誘導することを示した.昨年度,本年度の成果を合わせて,SSL12のような,これまで生理的な機能が未知であった毒素の生理機能を示すことができたとともに黄色ブドウ球菌は複数の毒素を介して免疫細胞の異常な活性化を引き起こし,アトピー性皮膚炎などの免疫アレルギー疾患の発症増悪にかかわる可能性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度,本年度の二年間において,二つの黄色ブドウ球菌毒素の,新たな生理機能を見出すことができた.また毒素と宿主細胞の相互作用にかかわる分子メカニズムについても解析が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
現在着手している毒素の免疫細胞活性化にかかわる分子メカニズムの解明を進めるとともに,その他の毒素についても免疫細胞の異常活性化の有無について探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響などで学会旅費などが不要であったため
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