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2020 年度 実施状況報告書

H. pylori感染と消化管内共生細菌との連動による胃癌幹細胞発生機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K07068
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

津川 仁  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30468483)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード胃オルガノイド / ピロリ菌 / 胃がん / がん幹細胞 / 胃内共生細菌
研究実績の概要

研究代表者は、これまでに胃内共生細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸が、CD44v9陽性胃癌幹細胞の前駆性細胞特性に寄与するCAPZA1の過剰発現を誘導することを明らかにしてきた。本年度は、SCFAのHDAC阻害活性がCAPZA1発現を惹起するかを検討するため、胃オルガノイドより幹細胞駆動型単層上皮細胞モデル(Mucosoid)の構築を開始した。構築したMucosoidを用いて、SCFA存在下におけH. pylori感染がCD44v9陽性細胞の発生につながるかを検証した。共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫組織化学的手法による解析によりSCFA存在下でのH. pylori感染が顕著にCD44v9陽性細胞の発生を促進させることを明らかとした。このCD44v9陽性細胞の発生誘導はCagA欠損H. pylori菌株では確認できず、また、CD44v9陽性細胞はCAPZA1の過剰発現を伴っていることも明らかとした。従って、CD44v9陽性細胞は、CAPZA1の過剰発現細胞を発生母地とし、そこへのCagAの蓄積により誘導されていることが明らかとなり、この反応は、胃内共生細菌代謝物SCFAがH. pyloriと強調することで促進されることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画書による本年度の研究実施目標は、① 胃粘膜内へSCFAsを供給する共生細菌の同定と、② 同定したSCFAs供給細菌によるCAPZA1発現誘導能の解明にある。これまでに、① 胃粘膜内へSCFAsを供給する胃内共生細菌の探索により、マウスモデルを用いたMiSeq次世代シークエンサー解析により、胃粘膜への効率的なSCFAの供給に関わる細菌として、LachnospiraceaeとASF356を同定している。本年度は、胃オルガノイド由来幹細胞駆動型単層上皮細胞モデルを用いて、H. pylori感染下におけるSCFAがCD44v9陽性細胞の発生に関与するメカニズムの解明研究がスタートされ、その結果、SCFAによるCAPZA1発現誘導によるCagA蓄積依存的なCD44v9陽性細胞の誘導能が確認でき、本研究は、おおむね計画通りに実施され、その成果が挙げられ始めている。

今後の研究の推進方策

昨年度及び本年度の研究によって、胃粘膜内へ供給されるSCFAsは、H. pylori存在下ではCD44v9陽性細胞の発生に寄与することが明らかとなり、また、胃粘膜内へのSCFAsの供給にLachnospiraceaeとASF356が強く関与する可能性が考えられている。今後、SCFAとH. pyloriとの協調による上皮細胞の幹細胞化誘導機構をMucosoidを用いて解析すると同時に、SCFAsの供給にCD44v9陽性癌幹細胞の発生に寄与する共生細菌を、ヒト胃液サンプルを用いて探索・同定する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Short-chain fatty acids bind to apoptosis-associated speck-like protein to activate inflammasome complex to prevent Salmonella infection2020

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa Hitoshi、Kabe Yasuaki、Kanai Ayaka、Sugiura Yuki、Hida Shigeaki、Taniguchi Shun’ichiro、Takahashi Toshio、Matsui Hidenori、Yasukawa Zenta、Itou Hiroyuki、Takubo Keiyo、Suzuki Hidekazu、Honda Kenya、Handa Hiroshi、Suematsu Makoto
    • 雑誌名

      PLOS Biology

      巻: 18 ページ: e3000813

    • DOI

      10.1371/journal.pbio.3000813

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Progesterone receptor membrane associated component 1 enhances obesity progression in mice by facilitating lipid accumulation in adipocytes2020

    • 著者名/発表者名
      Furuhata Ryogo、Kabe Yasuaki、Kanai Ayaka、Sugiura Yuki、Tsugawa Hitoshi、Sugiyama Eiji、Hirai Miwa、Yamamoto Takehiro、Koike Ikko、Yoshikawa Noritada、Tanaka Hirotoshi、Koseki Masahiro、Nakae Jun、Matsumoto Morio、Nakamura Masaya、Suematsu Makoto
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3 ページ: 479

    • DOI

      10.1038/s42003-020-01202-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 消化管内環境と相互作用する生体防御力に呼応する病原細菌の挙動2021

    • 著者名/発表者名
      津川仁
    • 学会等名
      第94回日本細菌学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 胃オルガノイド由来単層上皮培養系を用いたCagA依存的CD44v9陽性癌幹細胞の発生メカニズムの解析2021

    • 著者名/発表者名
      津川仁、鈴木秀和
    • 学会等名
      第26回日本ヘリコバクター学会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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