・これまで当研究室で性状解析を進めてきた生体内酸化LDL(LDL(-))のNETs形成への影響を、銅酸化LDLと比較した。LDL(-)は、PMA刺激で誘導されるHL-60由来好中球のNETs形成を促進したが、銅酸化LDLによる促進のおよそ60%と穏やかだった。LDL(-)画分は銅酸化LDLよりも酸化PCやlysoPCの含量が少ないものの、酸化変性を受けたLDL粒子とHDL粒子の混合物であることを見出している。そこで次にNETs形成へのHDLの影響を解析した。銅酸化LDL、POVPC、lysoPCはいずれもPMA刺激によるNETs形成を促進したが、これらをあらかじめHDLと混合しておくと、銅酸化LDLで促進されるNETs形成を部分的に抑制すること、POVPCとlysoPCによるNETs形成促進をほぼ消失させることを見出した。またHDLを銅酸化させると、上記の抑制効果がほぼ消失し、むしろNETs形成が促進された。以上の結果から、HDLは酸化LDLおよび酸化PCによる好中球NETs形成の促進を防ぐ働きをもつ一方で、HDLの酸化変性もNETs促進因子となる可能性を明らかにした。 ・LDLまたは酸化LDLの共存下でNETsを形成させ、その培養上清を用いて血管内皮細胞(HAECs)を刺激すると、HAECsでのsnail-1発現の上昇に伴ってαSMA発現が上昇した。またこれらの反応はERKリン酸化を伴って進行することを見出した。これらの結果から、NETsとLDLまたは酸化LDLで引き起こされる血管内皮での応答は、内皮間葉転換とERKシグナルのクロスリンクを介することが示唆され、HAECs表面受容体活性化の寄与についても検討する必要があると考えられた。
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