研究課題
21番染色体がトリソミーとなっているダウン症者は40代という早期からアルツハイマー病を発症し、脳内にアミロイドβペプチド(Aβ)が沈着する。ダウン症責任領域に存在する二重特異性チロシンリン酸化調節キナーゼ1A(dual-specificity tyrosine-(Y)-phosphorylation-regulated kinase 1A, DYRK1A)の過剰発現は、Aβの前駆体であるAPP(amyloid precursor protein)やAβを産生する酵素複合体構成因子のプレセニリンのリン酸化を介してAβ産生を亢進させ、Aβの主要分解酵素であるネプリライシンのリン酸化を介してAβ分解を抑制する。DYRK1Aによるネプリライシンの活性制御機構を明らかにするために、細胞内領域のリン酸化を詳細に解析した。神経系株化細胞にDYRK1Aを過剰発現させリン酸化特異的抗体を用いたウェスタンブロット解析により、ネプリライシンの細胞内領域のリン酸化が亢進することがわかった。さらに、リコンビナントDYRK1Aとネプリライシンの細胞内領域の合成ペプチドを用いたin vitroキナーゼ解析により、スレオニンへの直接的なリン酸化が確認された。本研究から、DYRK1Aはネプリライシンのスレオニンを直接リン酸化することにより、活性低下を導いていることが示唆された。またDYRK1Aはアルツハイマー病に対して増悪因子であることから、その阻害剤は有用な治療薬となり得る。そこで、DYRK1A阻害剤のスクリーニングを行うためにAlphaLISAを利用した実験系の確立を目指している。
4: 遅れている
所属先変更のため。
・DYRK1Aのノックダウンや薬理学阻害によるネプリライシン活性の解析DYRK1AのsiRNAを用いたノックダウンや既存の阻害剤を用いた薬理的作用によってDYRK1Aのキナーゼ活性阻害位を行い、その際の培養上清中のAβ量をサンドイッチELISAで定量する。またAβ量とネプリライシン活性の相関を解析する。・DYRK1Aによるネプリライシンのリン酸化阻害化合物のスクリーニングリコンビナントDYRK1Aおよびネプリライシンの細胞内領域にビオチンを付加した合成ペプチドを用いたAlphaLISAによるDYRK1Aの阻害化合物のスクリーニング系を確立し、化合物ライブラリーから新規DYRK1A阻害剤のスクリーニングを行う。スクリーニングでヒットした化合物処理による培養細胞系でのネプリライシンのリン酸化、活性、発現を解析し、既存の阻害剤と比較する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
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