研究課題/領域番号 |
19K07071
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩田 誠 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (50160122)
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研究分担者 |
伊藤 悦朗 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80203131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 濾胞性ヘルパーT細胞 / 低酸素 / HIF-1 / サイトカイン / インテグリン |
研究実績の概要 |
濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞は、リンパ系組織でナイーブCD4+ T細胞から分化し、濾胞領域にてB細胞の最終分化と抗体産生を制御して抗原特異性の高い体液性免疫の誘導に必須の役割を果たす。その乱れは、感染症、アレルギー、自己免疫、発がんなどのリスクを増大させる。しかし、Tfh細胞の分化誘導機序には未だ不明な点が多く、その分化誘導過程をin vitroで他の細胞種の寄与なしに忠実に再現する実験系も存在しなかった。In vitro分化誘導モデル系の構築は、Tfh細胞の分化機序の詳細を解明するための有力な手段となりうる。我々はTfh細胞が存在するリンパ系組織が血液より生理的に低酸素状態にあることに着目し、これがTfh細胞分化に寄与する可能性を検証した。まず、マウスナイーブCD4+ T細胞に対し、in vitroで種々の強度のT細胞受容体(TCR)刺激および種々のサイトカインとその添加タイミングの組合せを用いて、一定レベルのTfh細胞様分化を誘導する条件を見出した。 ナイーブCD4+ T細胞にTCR刺激を加えると、通常酸素分圧下でも低酸素誘導因子Hypoxia Inducible Factor-1α(HIF-1α)の発現が上昇する。しかし、通常酸素分圧下ではその発現は分解酵素によって急速に負に制御される。一方、低酸素分圧下では、TCRシグナルは制限されるものの、酵素によるHIF-1αの分解は低下する。また、シクロオキシゲナーゼ(COX)発現も促進されうる。我々は、通常酸素分圧下で上記Tfh細胞分化誘導条件に、HIF-1α分解阻害剤deferoxamineとCOX産物の一部などを濃度とタイミングを選んで加えることでin vitro Tfh様細胞分化をさらに促進させうることを見出した。これらに基づき、Tfh細胞分化誘導のin vitroモデル系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた研究項目について、概ね順調に実施することができた。但し、年度末に至って、都内の新型コロナウイルス感染状況を鑑み、協力学生の安全を考えて予定より早期に実験を一時停止することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にin vitro Tfh細胞分化誘導実験系を構築する際に得られた関与遺伝子候補の発現をin vivo Tfh細胞誘導において確認する。そして、このin vitroモデル系を利用して、その分化を抑制またはさらに増強する生理的因子を探索、解析する。その候補が見出せたら、その生理的因子またはその作用を代替する薬剤のin vivo Tfh細胞分化および抗体産生への影響を解析する。さらに、in vitro分化誘導したTfh様細胞を養子移入して、in vivoでの抗体産生への影響を調べる。
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