研究課題/領域番号 |
19K07073
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
上野 仁 摂南大学, 薬学部, 教授 (20176621)
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研究分担者 |
荻野 泰史 摂南大学, 薬学部, 助教 (80617283)
村野 晃一 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 研究員 (50827277)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セレン / レドックス / 糖尿病 / サルコペニア / フレイル |
研究実績の概要 |
加齢に伴う筋力低下や筋萎縮ならびにインスリン抵抗性を評価するため、インスリン標的組織中のセレンタンパク質発現とインスリンシグナルのレドックス制御との関係を解析することを目的とする。 この検討のため、昨年度はNSYマウスを用いたインスリン抵抗性マウスモデルを用いて検討したが、今年度は老化促進マウスのsenescence-accelerated mouse(SAM)P1及びそのコントロ-ルのSAMR1マウスを用いて検討した。すなわち同マウスを3~16週齢まで通常飼育した後、NSYマウスと同様の条件で高脂肪試料及びセレン添加水道水を12週間摂取させて28週齢におけるinsulin標的組織中のセレンタンパク質発現量を解析した。 その結果、SAMP1マウスとSAMR1マウス間で体重増加に有意な差は認められなかったが、SAMP1マウスにおいて高脂肪飼料摂取により体重の増加傾向が見られた。また、この高脂肪飼料摂取により肝臓、ヒラメ筋及び腓腹筋中のGPx1、SelP、SelH及びSelW mRNA発現量が有意に高く、膵臓及びハムストリングス中のGPx1及びSelP mRNA発現量が有意に高かった。一方、通常飼料及び高脂肪飼料のいずれの摂取群においても、これらセレンタンパク質発現の増大にセレン負荷が関わっていないことが示唆された。 以上の結果から、NSYマウスを用いた検討と同様に老化促進マウスにおいても、肝臓と同様に筋肉においてインスリン抵抗性惹起とともにセレンタンパク質発現量が増大する可能性が示唆された。 一方、昨年度に検討したNSYマウスの血清を用いて血中セレンタンパク質のLC-Q-TOF/MSの多重反応モニタリング法を利用したSelPおよびGPx3ペプチドの相対定量法の検討を行ったところ、セレン負荷ならびに高脂肪飼料摂取のいずれの群においても検出強度が増大する傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の検討において、SAMP1及びSAMR1マウスを長期飼育する必要があったが、コロナ禍において頻繁に大学の動物飼育室を訪れることが難しく、給水器の異常によりケージが水没してマウスを2回も水死させてしまったため動物実験を二度やり直すことになってしまった。 このため、マウスの解剖時期が当初の予定よりも半年以上遅れ、組織中のセレンタンパク質発現や酸化ストレスマーカーなどの実験ができなくなってしまった。また、コロナ禍のため研究室への来室頻度が下がり、RT-PCRやウエスタンブロッティングなどの実験遂行もなかなかできず、さらに研究が遅れることになったためである。
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今後の研究の推進方策 |
SAMP1マウスを用いた動物実験において、骨格筋を含めたinsulin標的組織におけるセレン負荷及びセレンタンパク質の発現とレドックス状態との関係を解析することが必要と考えている。とくに、今年度のSAMP1マウスを用いた実験において、現時点での結果からNSYマウスを用いたインスリン抵抗性マウスモデルと同様にインスリン抵抗性についても検討しておく必要性が示唆された。 そのため、さらに同様の動物実験を繰り返すことも検討している。そのためには、4HNE抗体を用いた免疫染色法により組織中ROS産生についても調べる必要がある。 次年度は本研究の最終年度であり、本研究課題の目的を達成するには研究期間をもう1年延長申請するか、本研究課題に沿った新たな研究課題を再申請するかなど検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の計画が遅れており、一部のRT-PCR実験ができず、また物品費が大幅にかかるウエスタンブロッティングなどの実験を行っていないためである。 次年度以降も動物実験を繰り替えすことも検討しており、そのために次年度研究使用額が生じている。
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