研究課題/領域番号 |
19K07074
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (20349822)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Phosphorothioate化修飾 / DNA修飾 / メチル化 / Helicobacter cinaedi / Helicobacter / Dnd遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究はHelicobacter cinaediの特定のクローンにのみ存在するDNA修飾であるPhosphorothioate(PT)化修飾に着目しその役割を明らかにすることを目的としている.DNAのPT化修飾は近年明らかになった新規のDNA修飾であり,メチル化修飾では塩基がメチル化されるのに対し,PT化修飾ではデオキシリボースを繋ぐリン酸基の酸素が硫黄に置換される.メチル化修飾は外来DNAから自己のDNAを守るRestriction-Modification(RM)システムの一環であるだけでなく,遺伝子の発現調節を介して病原性や環境適応に寄与している.一方,PT化修飾の役割には不明な点が多い.そこで,本研究ではH. cinaediのPT化修飾が,病原性や環境適応においてどのような役割を果たしているのかに着目する. 本年度はこれまでにdnd遺伝子群のノックアウト株を用い,SMRT法によるPT化の標的モチーフ決定を行った.これまでの他菌種での報告と同様,H. cinaediでもPT化は標的モチーフの一部(10%以下)でのみ観察された.SMRT法では検出できないPT化を検出するため,現在,ゲノム支援のサポートにより,PT 化修飾部位が ヨウ素により容易に切断されることを利用して PT 化修飾を検出する方法(PT IC seq 法)によりPT化の頻度を算出する解析を行っている. 一方,dnd遺伝子群のノックアウト株のトランスクリプトーム解析により,発現変動が認められた遺伝子について,ノックアウト株を作製しトランスクリプトーム解析を行っており,phenotypeとの関連の解析を行っている.また,発現変動が認められた遺伝子とPT化モチーフとの関連についても精査している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PT化の頻度は当初,LC/MSで解析する予定としていたが,PT IC seq 法が報告され,この方法を利用した解析をゲノム支援で行っていただけることになり,当初より簡便な方法で解析できることになった.
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今後の研究の推進方策 |
dnd遺伝子群のノックアウト株で発現変度が認められた遺伝子のノックアウト株の作製が終了したので,RNA-Seqを進めていく.また,PT化の頻度をコントロールしていると考えられるdndB遺伝子についてもノックアウト株を作製したので,野生株とトランスクリプトームを比較するともに,PT-IC-Seq解析により各モチーフにおけるPT化の変動を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが次年度以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定.また,本年度に実施を予定していた実験の一部を次年度に行うため、その際に必要となる試薬、消耗品の購入費用に充てる.
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