研究課題/領域番号 |
19K07077
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 部長 (20416564)
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研究分担者 |
中村 篤 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 医療系職員 (40785713)
臼杵 扶佐子 鹿児島大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 客員研究員 (50185013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メチル水銀 / 神経機能障害 / 筋機能障害 / 神経障害性疼痛 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、水俣病を代表とするメチル水銀中毒において引き起こされる神経機能障害および筋機能障害の治療を可能にするために、まず、メチル水銀中毒動物モデルを用いてその発症メカニズムを実験的に明らかにし、さらにその発症メカニズムに基づいた薬剤等による治療効果を実験的に明らかにすることによってメチル水銀中毒の治療についての有益な情報を得ることである。 昨年までの研究によって、当初の目的である神経機能障害および筋機能障害の治療についてはROCK阻害剤および振動刺激処置が有用であることを明らかにした。そしてその後、昨年度からメチル水銀曝露によって引き起こされる神経障害性疼痛についての研究を実施している。 本年度 (令和4年度) は、前年度に作成に成功したメチル水銀中毒モデルラットを用いて神経障害性疼痛に対する薬剤の抑制作用について検討した。その結果、ROCK阻害剤であるFasudilがメチル水銀曝露によって発症する神経障害性疼痛を抑制することが明らかになった。さらに、その抑制機序について検討した結果、脊髄後角におけるメチル水銀による炎症性サイトカインの発現増加と非炎症性サイトカインの発現低下に対してFasudilが抑制していることが関係していることが示唆された。また、ガバペンチン (神経障害性疼痛に対して臨床使用されている) においても本モデルにおける疼痛抑制効果を確認したが、その抑制メカニズムについては検討中であり、今のところ明確な結果には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度 (令和2年度) は、メチル水銀中毒動物モデルを用いた実験によって、ROCK阻害剤および振動刺激処置が組織病理学的に神経軸索および筋線維の再生を促し、さらにはその詳細なメカニズムについて実験的に明らかにした。これらの結果に関しては2報の学会発表を行い、さらに2報の論文としてまとめ、国際学術雑誌における出版を達成した。 昨年度 (令和3年度) は、メチル水銀中毒動物モデルにおいて下肢に神経障害性疼痛 (疼痛閾値の低下および痛覚過敏) が生じていることが明らかにした。さらに、その詳細なメカニズムについて実験的に明らかにすることに成功した。これらの結果に関しては2報の学会発表を行った。 本年度 (令和4年度) は、昨年度の結果について1報の論文および1報の図書としてまとめ、国際学術雑誌における出版を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本メチル水銀中毒モデルにおける神経障害性疼痛に対する薬剤の効果について検討中であり、既に Fasudil (ROCK阻害剤) およびガバペンチン (神経障害性疼痛に対して臨床使用されている) の疼痛抑制効果を確認済みである。特に Fasudil については、神経性疼痛抑制メカニズムについても明らかになっている。 今後は、Fasudilの研究結果について論文化を行うとともに、ガバペンチンの疼痛抑制作用のメカニズムについて探求する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた米国毒性学会への参加が、新型コロナウイルスの拡散防止のため中止になった。よって、その旅費および参加費の必要が無くなったため、次年度使用額が生じた。 また、本年度までに終了できなかったメチル水銀誘発神経疼痛に対する薬剤の抑制機序についてもう一年研究を行う必要が生じた。
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