研究課題
DMSOやレチノイン酸を培養液に加えると好中球様に分化するHL-60細胞の免疫染色を行なった。Sure Path法により塗抹標本を作製した後、細胞のアクチン線維とダイナミン2の蛍光免疫染色を行った。HL-60細胞が既報通りに1.5%DMSOを細胞に7日間作用させると好中球様に分化することを確認した。好中球への分化は、マーカーであるCD11bの発現をウエスタンブロット法にて確認した。この分化させた細胞に、ダイナミン2野生型またはK562E変異を発現するプラスミドを導入した。導入効率は約3~4割であった。ダイナミン2野生型を発現させた細胞では、細胞膜から突起が伸展した。一方、K562E変異体を発現させた細胞では、ダイナミン2野生型を発現させた細胞より突起の形成が減少傾向にあり、アクチン線維の凝集体が散見された。従って、ダイナミン2は、分化させたHL-60細胞の突起形成に働くことが示唆された。今後、アクチン線維の動態とダイナミンの機能相関をこの細胞を用いて解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
HL-60細胞は、分化刺激により好中球様の性質を示すことが知られている。このため、好中球の解析に汎用される細胞である。本年度は、この細胞の免疫染色を行うために3種類の塗抹標本作成法(Sure Path法、Smear Gell法、Cytospin法)を試み、Sure Path法が最もダイナミンの局在、及び細胞骨格の観察に適していることを確認した。さらに、ダイナミン2の外来遺伝子(野生型、変異体)を導入したところ、細胞の突起の形成に影響が出ることも見出した。観察系は確立することができた。よって、概ね順調に研究は遂行していると考えている。
ダイナミン2の集積する細胞突起は、アクチン線維束で支持されていると考えられ、ダイナミンによる制御が予想される。本年度にHL-60細胞を用いてダイナミンの機能を評価する系が確立した。今後、この系を用いて、まずは、突起形成を指標に解析していく予定である。ダイナミン2の各種変異体(GTPase欠失、重合不完全変異体等)の効果を調べるとともに、in vitroで、ダイナミン2ーアクチン線維複合体の構造解析をクライオ電子顕微鏡、高速AFMを用いて進める。
今年度分経費は、効率よく執行でき、又予定していた旅費の執行がなくなったので、残金が発生した。残金は次年度使用額として次年度予算と合わせて消耗品購入に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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