これまでに、ダイナミン2が、in vitroにてアクチン線維を直接束ねることを見出した。ダイナミン2野生型またはK562E変異体を、アクチン線維と混合すると、直径が約50nmのアクチン線維束が形成された。このアクチン線維束を高速原子間力顕微鏡で観察した。いずれのダイナミンも、螺旋状に重合した、その螺旋のリムの部分にアクチン線維が結合していることが判明した。つづいて、ダイナミンによるアクチン線維束形成とGTPaseの関係を調べた。ダイナミンにより、束化されたアクチン線維は、GTPの添加により速やかにこわれた。一方、GTPの非加水分解アナログであるGMP-PNPを添加しても、その形態に変化は見られなかった。これらの結果から、ダイナミンは、アクチン線維を束化し、自身のGTPase活性を用いて、アクチン線維束を作る、解くということが明らかとなった。ダイナミン2-K562Eは、野生型と同様にアクチン線維を束化した。また、GTPの添加により、アクチン線維束が速やかに解かれた。これらの結果は、K562E変異は、アクチン線維束形成能には、影響しないということを示している。最後に、K562E変異体で形成されたアクチン線維束の細胞膜に模倣したリポソームへの結合能を野生型のそれと比較した。K562E変異体で形成されたアクチン線維束には、リポソームの結合はほとんど見られなかった。ダイナミン2は好中球の細胞内で、アクチン線維束を形成し、そのGTPase活性を利用してアクチン線維束の形態を制御し、好中球の突起形成に関与しているものと考えられた。本研究の一部は、欧文雑誌Frontiers in Cell and Developmental Biology(2022年5月10日)に掲載された。
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