研究課題
本年度は、1)長鎖アシルCoA合成酵素4(ACSL4)欠損マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を用いたin vitroの解析を行ったのち、2)in vivoの解析も併せて行った。1)野生型(WT)とACSL4欠損BMDMを用いて解析を行ったところ、ACSL4がリン脂質中の高度不飽和脂肪酸 (HUFA) 含量の維持に重要であることを明らかとした。さらに、BMDM機能を詳細に解析し、ACSL4の欠損により刺激依存的なプロスタグランジン(PG)類の産生が増加することを明らかとし、ACSL4がアラキドン酸の再取り込みに関与していることを提唱した。その一方で、マクロファージのサイトカイン産生や貪食作用には大きく影響しないことから、これらの機能発現にはHUFAの関与は低い可能性が考えられた。2)in vitroの解析から、ACSL4の欠損がリン脂質中のHUFA含有量やPG類の産生に影響することが明らかとなった。そこで、次にin vivoにおけるACSL4欠損の影響について解析を行った。これまでの解析から、ACSL4欠損マウスにリポ多糖(LPS)投与するとWTマウス比較して死亡率が増加することを見出しており、本モデルについて解析を進めた。その結果、ACSL4 KOマウスに非ステロイド性抗炎症薬を前処理すると、LPS投与による死亡率の増加が抑えられることが明らかとなった。この結果より、本モデルにおける死亡率の増加にPG類の過剰な産生が寄与している可能性を考え、現在さらに詳細な検討を進めている。
3: やや遅れている
計画したそれぞれの解析について進めており、徐々に結果も得られつつあるが、ACSL4欠損マウスは、雌性生殖に異常がある(産仔数が少ない)ことから、ACSL4欠損マウスを用いた解析に若干解析が遅れている。
交配のペア数を増やすことにより、解析に用いるマウスを確保し検討を進める。解析内容については、1)ザイモザン誘導型腹膜炎モデル、2)敗血症モデル、及び3)雌性生殖に着目し、ACSL4の機能を明らかとすることを目指す。
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