研究課題
本研究計画は,生体内で血液と直に接しているというきわめて特殊な環境に存在する血管内皮細胞において,重金属や活性酸素に対する防御因子として機能する活性イオウ分子の機能および産生調節を,重金属,細胞増殖因子/サイトカインおよび有機-無機ハイブリッド分子を用いて解析しようとするものである。2019年度から2021年度までの研究期間に(1)活性イオウ分子は血管内皮細胞の増殖を促進的に制御する,(2)TGF-βはALK5-Smad2/3/4およびALK5-Smad2/3-ATF4経路の活性化によって活性イオウ分子産生酵素のうちCystathionine γ-lyase(CSE)およびcystathionine β-synthase(CBS)を誘導して細胞内高分子量型活性イオウ分子を増加させ,その内皮細胞増殖抑制modulateする,(3)FGF-2はERK1/2経路の活性化によってCSEを誘導して細胞内高分子量型活性イオウ分子を増加させる,(4)重金属の鉛はPERK-ATF4経路を活性化してCSEを誘導し,細胞内cysteine persulfideを増加させる,(5)外来性錯体であるCopper diethyldithiocarbamate(Cu10)はERK1/2経路,p38 MAPK経路およびHIF-1α/HIF-1β経路を活性化してCSEの転写を誘導する,ことを明らかにした。以上の結果は,血管内皮細胞が,生理的な調節因子であるサイトカイン/細胞増殖因子,毒性を示す重金属,外来性の化学物質に対してそれぞれ特有の細胞内シグナル経路の活性化によって選択的な活性イオウ分子産生酵素を誘導し,細胞内活性イオウ分子の増加を通じて増殖などの機能を制御していることを示唆している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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