研究計画ごとに、レギュカルチン(RGN)に関する研究実績について述べる。 (1)肥満症の発症機序におけるRGNの関与の解明: 肥満を伴う糖尿病では、膵島にマクロファージが浸潤して、膵β細胞の機能障害が起こることが知られている。そこで、RGNを過剰発現させた膵β細胞由来MIN6細胞と活性化マクロファージを共培養することで、マクロファージから放出された炎症性サイトカインによって惹起されるMIN6細胞の炎症反応がRGNによって抑制されることを見出した。さらに、RGNを特異的に発現誘導する天然化合物を独自に発見し、RGN発現誘導化合物が活性化マクロファージを介したMIN6細胞のアポトーシス細胞死を抑制することも見出した。 (2)癌の発症機序におけるRGNの関与の解明:ヒト前立腺癌由来PC-3細胞にRGNを過剰発現させたところ、癌抑制遺伝子であるp53・Rbの発現が上昇し、細胞増殖に関与するRas・MAPキナーゼ・PI3キナーゼの発現が低下し、細胞増殖が抑制されることを見出した。 (3)神経変性疾患の発症機序におけるRGNの関与の解明:小胞体ストレス誘導性のストレス顆粒の形成は、細胞のストレス応答反応の1つであり、神経分化したPC12細胞において、RGNはカルシウムシグナル伝達経路であるCaMキナーゼ経路を制御することにより、ストレス顆粒の形成を抑制することを見出した。 (4)骨粗鬆症の発症機序におけるRGNの関与の解明:両側卵巣摘出により作製した閉経後骨粗鬆症モデルマウスに抗RGN抗体を静注することで、破骨細胞数の減少を認めることができたものの、抗RGN抗体の作用機序を分子レベルで解明できなかったが、今後も研究を進める予定である。
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