研究課題/領域番号 |
19K07095
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
小西 守周 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00322165)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再摂食 / 肝細胞障害 / 好中球 / FGF21 |
研究実績の概要 |
2020年度においては、再摂食時に肝臓に好中球が流入するメカニズムを検討した。マウスを46から48時間絶食させ、その後グルコース入りの寒天を与え再摂食を促すと、再摂食直前の絶食状態に比較して、好中球に対するケモカインであるCXCL1の産生が著しく増加した。この時、同じように分泌因子FGF21の産生が増加したことから、CXCL1の産生とFGF21の関わりについて検討を試みた。ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を組換えFGF21タンパク質で処置したところ、CXCL1の産生が誘導された。この産生は、FGF21タンパク質の処置後1時間で最高となり、その後低下した。この結果から、FGF21は肝細胞に直接に作用してCXCL1の産生を誘導することが示唆された。一方、再摂食によりマウス肝臓で増加するCXCL1の発現は10倍を超えることもあり、FGF21によりHepG2を刺激した時の数倍の増加とは大きく異なる。したがって、FGF21によるCXCL1の発現増強が、さらにCXCL1の発現を増強するシステムがあるものと期待し、一つの可能性として好中球が肝細胞に作用しポジティブフィードバック的にCXCL1を誘導する可能性を検討した。マウス好中球とHepG2の共培養を行ったところ、予め活性化させた好中球により肝細胞からCXCL1が誘導される可能性を見出した。 加えて、好中球にFGF21が作用する可能性についても検討するため、FGF21の受容体であるβKlothoについて発現を検討した。βKlothoは肝臓に発現することが知られており、通常食飼育下での肝臓だけではなく、絶食肝や再摂食した際の肝臓でも発現が認められた。一方で、好中球ではβKlothoの発現はほぼ検出できなかったことから、FGF21が肝細胞傷害に寄与する時には、好中球ではなく肝細胞に作用していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
再摂食を行った肝臓への好中球の浸潤については、マウスを用いたin vivoの検討で明らかにできた。しかし、そのメカニズムの解明に向けて、引き続きFGF21の肝細胞への直接作用を培養細胞などで検討したが、安定した結果が得られなかった。これは、当初再摂食後8時間で好中球の浸潤が起こることから、培養細胞などを用いた際に、組換えFGF21タンパク質の処置を3-6時間程度としたことが問題であった。生体での好中球の浸潤やFGF21の発現上昇について再度データを検討した結果、当初想定していたよりも短い1時間でFGF21の作用を確認できた。しかし、以上の作用時間の決定に大きく時間がかかってしまったことで、当初計画に含めていた他臓器の検討などを進めることができず、進捗がやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、肝細胞に対しFGF21がケモカインの産生を誘導し、その結果、肝臓への好中球の浸潤を促すことを明らかにした。ただし、FGF21がケモカインの誘導を促す、詳細な細胞内シグナリングは不明である。そこで、FGF21の下流に存在する各種MAPキナーゼの活性化およびそれらの阻害剤などの添加を検討することで、ケモカイン発現に関する細胞内シグナリングを明らかにする。本年度では、以上のデータが集まり次第、論文化を目指す。 さらに、FGF21の産生臓器あるいは作用臓器としては肝臓以外にも脂肪組織などが知られている。そこで、再摂食条件で肝臓以外の代謝関連臓器の変化を検討し、FGF21ノックアウトマウスでも同様の変化が生じるか、また変化が生じるのであれば今回の研究成果をもとに、まず好中球の関与を検討する。
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