研究課題/領域番号 |
19K07097
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川畑 伊知郎 東北大学, 薬学研究科, 特任准教授 (30579743)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | V-1/CP複合体 / 脂肪酸結合タンパク質 / FABP / αシヌクレイン / シヌクレイノパチー / パーキンソン病 / アルツハイマー病 / 老化 |
研究実績の概要 |
高齢化社会を迎え、加齢による神経機能の低下を予知し、予防することが重要である。しかし、加齢によりなぜ神経機能が低下するのか、具体的なメカニズムは明らかになっていない。またその予防方法は開発されていない。申請者らはこれまでに、新規アクチン重合制御因子V-1/CP複合体が、脳内で神経細胞特異的に形成され、ラットおよびマウス神経細胞の生存維持に必須であり、その神経機能を強力に活性化することを明らかにした。またパーキンソン病ヒト剖検脳を用いた免疫組織化学的解析から、パーキンソン病で同複合体が消失し、またマウスモデルの解析から加齢に伴い同複合体形成が低下することを見出した。これらの研究背景から、V-1/CP複合体がどのようにしてその形成能力を失い、また同複合体の消失をどのように防ぐことが可能か検討を行った。初年度では、パーキンソン病患者において増加するバイオマーカーを探索し、神経変性過程におけるV-1/CP複合体の消失が脂肪酸結合タンパク質(FABP)依存的であることを明らかにした。そこで本年度は、同複合体が消失するメカニズムについて様々な疾患モデルを用いて解析を行った。FABPノックアウトマウスおよび同マウス由来培養神経細胞を用いてパーキンソン病モデルを作成した結果、FABPノックアウトではV-1/CP複合体の消失が認められなかった。また、パーキンソン病の原因タンパク質αシヌクレインの細胞内蓄積・凝集によりV-1遺伝子発現が上昇する一方、V-1/CP複合体形成は低下した。さらにFABPノックアウトではαシヌクレインの細胞内取り込みが行われず、同条件下およびFABP阻害薬処置群ではV-1/CP複合体形成の減少が認められなかった。これらの結果から、神経変性疾患におけるV-1/CP複合体の消失がFABP依存的であり、FABP阻害により同複合体を保護できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、V-1/CP複合体が消失するメカニズムを明らかにし、加齢によりなぜ神経機能が低下するのか、その具体的なメカニズムについて解析を行った。アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症患者血漿の解析から、血漿中レベルが疾患で増加するバイオマーカーに着目した。その結果、V-1/CP複合体は神経変性過程において、脂肪酸結合タンパク質(FABP)依存的にその複合体形成能力を失うことが明らかとなった。具体的に、同複合体が消失するメカニズムについて様々な疾患モデルを用いて解析を行った。FABPノックアウトマウスおよび同マウス由来培養神経細胞を用いてパーキンソン病モデルを作成し、免疫細胞化学的解析の結果、FABPノックアウトではV-1/CP複合体の消失が認められなかった。また、パーキンソン病の原因タンパク質αシヌクレインの細胞内蓄積・凝集によりV-1遺伝子発現が上昇する一方、V-1/CP複合体形成は低下することが明らかとなった。FABPノックアウトではαシヌクレインの細胞内取り込みが行われず、同条件下ではV-1/CP複合体形成の減少が認められなかった。さらに、複数のFABP阻害薬のスクリーニングにより、FABP3阻害薬がV-1/CP複合体の保護作用を持つことが明らかとなった。これらの結果から、神経変性疾患におけるV-1/CP複合体の消失がFABP依存的であることが明らかとなった。またFABP3阻害薬により同複合体を保護し、神経変性過程ににおける同複合体の消失と神経機能の低下を抑制可能であることを見出すことができた。これらの成果から、神経変性過程においてV-1/CP複合体を保護する化合物を見出すことに成功し、実際の疾患修飾効果の検討が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果より、FABP3阻害薬がV-1/CP複合体を保護し、神経変性過程ににおける同複合体の消失と神経機能の低下を抑制可能であることを見出すことができた。そこで、神経変性過程においてV-1/CP複合体を保護する化合物が、実際に疾患モデルマウス、および加齢モデルにおいて、疾患修飾薬としての薬効を示すのか、その治療効果の検討が必要である。最終年度では、FABPファミリータンパク質を標的とした化合物群のマウス経口投与により、実際にV-1/CP複合体が保護され、神経機能が保持されるか、各種疾患モデルマウスを用いた薬効薬理学的解析によりその治療効果を生体レベルで明らかにする。
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