研究課題/領域番号 |
19K07098
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
後藤 真里 お茶の水女子大学, ヒューマンライフイノベーション研究所, 特任准教授 (80467050)
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研究分担者 |
宮本 泰則 お茶の水女子大学, ヒューマンライフイノベーション研究所, 教授 (50272737)
毛内 拡 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90708413)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環状ホスファチジン酸 / 脳血管障害 / 代謝物 / アストロサイト / テネイシンC |
研究実績の概要 |
脳梗塞を主体とする脳血管障害は、我が国の死因第4位であり認知障害などの後遺症は患者のQOLを著しく低下させる要因のひとつである。虚血により生じる認知 障害は海馬CA1領域の遅発性神経細胞死が関与しており、血管性認知症の治療・予防には、この細胞死への対処が必要不可欠である。環状ホスファチジン酸 (Cyclic phosphatidic acid, cPA)は生体内に存在する生理活性脂質であり、虚血が引き起こす遅発性神経細胞死を抑制する。 本研究において今年度は、下記の点について明らかにした。 ①2ccPAの代謝物同定:薄層クロマトグラフィーを用いて2ccPAの人工胃液中での経時的な安定性を検討したところ、2ccPAから移動度の低い化合物が生成されることがわかった。新たな化合物が生成したスポットをTLCプレートからかき取り、抽出し化合物を精製した。精製した化合物について飛行時間型質量分析計を用いて構造解析を行った。その結果、人工胃液中で2ccPAから生じた化合物は2ccPAが開環したものであることが明らかになった。これを我々は2carbaLPA(2carba-Lysophosphatidic acid)と命名した。 2carbaLPAのLPA受容体への活性化作用について検討した結果、LPA3,4に対しては内在性リガンドであるLPAよりも強い活性を持つことが明らかになった。2ccPAの分解物である2carbaLPAも受容体活性化作用を持っていたことから、これまで我々が明らかにしていた2ccPAが持つ生理作用には生体内で分解された2carbaLPAの生理活性も含まれている可能性が示された。 ②2ccPAのアストロサイトへの作用機序解明:2ccPAが脳穿刺損傷モデルにおいてアストロサイトのテネイシンCの発現を上昇させ、その結果、神経細胞死が減少することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課程で予想以上に2ccPAの作用が解明されてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく、さらに本研究を行う過程で新たに発見した2ccPAの血液凝固反応を促進する作用について機序解明し、本研究が最終的に目指す神経保護作用を持つ生理活性脂質のメカニズム解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の回数が予測以上に少なくすんだため。しかし、来年度は異動を伴い、これまで消耗品や備品などの購入金額が増す予定である。
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