研究実績の概要 |
脳梗塞を主体とする脳血管障害は、我が国の死因の上位であり認知障害などの後遺症は患者のQOLを著しく低下させる要因のひとつである。虚血により生じる認知障害は海馬CA1領域の遅発性神経細胞死が関与しており、血管性認知症の治療・予防には、この細胞死への対処が必要不可欠である。環状ホスファチジン酸(Cyclic phosphatidic acid, cPA)は生体内に存在する生理活性脂質であり、虚血が引き起こす遅発性神経細胞死を抑制する。 本研究では、下記の点について明らかにした。 ①2ccPAの代謝物同定:薄層クロマトグラフィーを用いて2ccPAの人工胃液中での経時的な安定性を検討したところ、2ccPAから移動度の低い化合物が生成されることがわかった。人工胃液中で2ccPAから生じた化合物は2ccPAが開環したものであることが明らかになった。これを我々は2carbaLPAと命名した。 2carbaLPAのLPA受容体への活性化作用について検討した結果、LPA3,4に対しては内在性リガンドであるLPAよりも強い活性を持つことが明らかになった。2ccPAの分解物である2carbaLPAも受容体活性化作用を持っていたことから、これまで我々が明らかにしていた2ccPAが持つ生理作用には生体内で分解された2carbaLPAの生理活性も含まれている可能性が示された。 ②2ccPAのアストロサイトへの作用機序解明:2ccPAが脳穿刺損傷モデルにおいてアストロサイトのテネイシンCの発現を上昇させ、その結果、神経細胞死が減少することを明らかにした。 ③2ccPAは穿刺脳損傷モデルにおいて、血液凝固反応への関与について解析を行った。
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