研究課題/領域番号 |
19K07100
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
土屋 浩一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (70301314)
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研究分担者 |
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60432754)
宮本 理人 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60456887)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 亜硝酸塩 / 脂肪細胞 / AMPK |
研究実績の概要 |
亜硝酸塩による白色脂肪細胞および白色脂肪前駆細胞からのベージュ細胞化について、ddy系雄性マウスに5週間亜硝酸ナトリウムを飲水投与する事で白色脂肪細胞重量の有意な低下と脂肪組織において褐色脂肪細胞関連遺伝子の発現が上昇した事から、今年度はマウス繊維芽細胞である3T3-L1細胞を常法に従って分化誘導し、次に分化培地で培養する際に種々の濃度の亜硝酸塩を添加する条件で実験を行った。そうしたところ、亜硝酸塩の添加によりPPARγの有意な増加と、PGC-1αおよびUCP1の増加傾向が観察された。これらの結果から亜硝酸塩が脂肪細胞への分化を促進し、褐色化を誘導する可能性が示唆されたことから、次に脂肪細胞中のトリグリセライド(TG)蓄積に与える影響を検討した。トリヨードチロシンをpositive-controlとして用い硝酸塩による細胞内TG蓄積に与える影響を観察したところ、3×10-7Mの亜硝酸塩濃度でも有意なTG蓄積抑制効果が観察された。そこで、この活性化メカニズムを解明する目的で、細胞のエネルギー代謝に関わるシグナル分子であるAMPK(5’AMP-activated protein kinase)の活性化に亜硝酸塩が関与するか検討したところ、1×10-6Mの亜硝酸塩濃度で脂肪細胞においてAMPKの活性化傾向がまた、1×10-5Mでは有意な活性化が観察された。しかしながら、AMPK活性化剤として知られているAICARを添加した実験では、TGの減少は見られなかった。 これらの結果より、亜硝酸塩による白色脂肪細胞および白色脂肪前駆細胞からのベージュ細胞化には、AMPK以外の因子の可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分化誘導した白色脂肪細胞に対して亜硝酸塩を添加し、その表現型であるトリグリセライドの蓄積を評価できたこと、また、褐色化に関与するタンパク質の発現と、関与する機構としてAMPKの存在を明らかにすることができた。 さらに、低濃度(3×10-7M)の亜硝酸イオンでもトリグリセライド蓄積抑制効果が見られたが、この濃度は硝酸塩が多く含まれる野菜を摂取した後に一過性に上昇する血中亜硝酸イオン濃度に該当することから、野菜摂取の生理的意義の解明にも結びつくことが期待される。 以上の事から、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である事から論文化に向けて追加実験を行う。特に、低濃度の亜硝酸塩による白色脂肪細胞のベージュ化に焦点を当てた実験を行う。 また、亜硝酸塩は生体内で①一酸化窒素(NO)となり血管拡張作用と抗菌仮性を有すること、②AMPK活性化作用を通じて細胞内代謝に関与することが知られているが、最近10年近く、新たな生理作用は報告されていなかった。我々は今回の実験を通じて、亜硝酸塩の第3の生理作用を見出したので、その点についても研究を進めていく。
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